焼香の意味とは?一般的な作法と基本的なマナーを解説

葬儀

葬儀や通夜などの場面で行う「焼香」。たびたび行うことではないため、正しく覚える機会が少なく前の人のやり方を真似るなど、なんとなくすませている方も多いかもしれません。そこで焼香の意味や由来などから、一般的な作法やマナーについても解説。失礼なく振る舞えるよう、焼香について学んでおきましょう。

(目次)
●葬儀で行われる焼香とは?知っておきたい意味と由来
●一般的な焼香の作法と回数
●焼香のマナーと疑問点
●合掌の際のマナー
●まとめ
●證大寺|葬儀のご相談

葬儀で行われる焼香とは?知っておきたい意味と由来

葬儀で行われる焼香とは?知っておきたい意味と由来

焼香は葬儀などで行われる供養方法の一つです。細かく砕いた「抹香」を指先でつまみ、香炉に落としてくべる動作のことを指します。

焼香の意味

仏教では香の匂いは邪気を払うとされていて、焼香することでお参りをする人の心身を清めるという意味があるとされています。同時に故人や仏様に敬意を表す行為で、冥福を祈るための儀式といえるでしょう。葬儀で焼香を焚くのは、香りを出すことで極楽浄土からお迎えが来て故人が迷いなく旅立てるようにするためでもあります。また香りは故人や仏様の食べ物と考えられているため、香りをお供えするという意味もあります。
ちなみに焼香は一般的には「お焼香」と呼ばれることが多いですが、正しくは「ご焼香」といいます。

焼香の由来

ではいつごろから焼香が行われるようになったのでしょうか。
諸説ありますが、焼香はもともとインドで始まり、お釈迦様が在命の頃から存在していたといわれています。暑さが厳しいインドでは、遺体の腐敗臭を押さえるために、豊富に採取できる香木が使われるようになったとされます。日本では飛鳥時代に仏教とともに香が渡来し、隅々まで平等に香りが広がることから仏の慈悲を讃えるものとされ、やがて葬儀等には欠かせないものとなっていきました。

一般的な焼香の作法と回数

一般的な焼香の作法と回数

焼香は故人との関係性の深さに応じて順番に行われます。絶対的な決まりはないものの、喪主、遺族、親族、参列者となるのが通例で、基本的に一人ずつ行います。子どもが参列した際、幼いと一人ではできない場合もありますが、ある程度の年齢になったら一人で焼香できるようにしたいものです。
また焼香の種類や回数は宗派によって異なることがあります。まずは焼香の種類について説明します。

焼香の種類

焼香の種類

焼香には3つの形式があり、会場の広さやタイプ、地域性などによってやり方が決められます。

立礼(りつれい)焼香

立ったままで行う焼香のやり方です。葬儀場がイス席の場合などで多く行われるやり方で、現代では最も一般的な方法といえるでしょう。式中はイスに着席し、順番が来たら遺影の前にある焼香台に進み、焼香を行うというものです。
規模によっては焼香台が複数台用意されている場合もありますが、開いている香炉を使って焼香を行なって構いません。夫婦で参列の場合には焼香台までは一緒に進み、焼香は一人ずつ行います。

座礼(ざれい)焼香

和室などでの葬儀では、座った姿勢で行う座礼焼香を行う場合もあります。手順は立礼焼香と変わりませんが、移動の仕方には作法があります。正座をしたまま両側に手をついて膝から下を畳につけた状態で移動する「膝行(しっこう)・膝退(しったい)」という方法で移動します。ただし席から焼香台までが遠い場合は歩いてもかまいませんが、中腰で身をかがめた低い姿勢で進むようにします。

回し焼香

自宅など小規模な葬儀の場合には、香炉と抹香を乗せた盆を順番に回していく「回し焼香」という方法がとられることがあります。盆が回ってきたら軽く会釈して受け取り、座敷であれば自分の前に置いて焼香します。イスの場合は膝の上に乗せて焼香します。焼香が終われば次の方に回します。

焼香の作法

焼香の作法は、抹香を押しいただかない方法と押しいただく方法があります。

浄土真宗の作法

浄土真宗では、抹香を押しいただく動作は行いません。

浄土真宗の作法

(1)焼香台の前に立ち、遺族・僧侶に一礼し、遺影にも一礼・合掌します。
(2)焼香台にある抹香を右手の親指・人差し指・中指の3本でつまみ、炉に落としてくべます。
(3)数珠をかけて合掌します。
(4)焼香後、再び遺影に一礼し、遺族にも一礼して自分の席に戻ります。

押しいただく場合の作法

押しいただく場合の作法

押しいただかない焼香の作法と同様に、焼香前に遺族・僧侶に一礼し、遺影にも一礼・合掌します。
(1)焼香台にある抹香を右手の親指・人差し指・中指の3本でつまみます。
(2)抹香を押しいただきます。抹香をつまんだまま軽く頭をさげ、右手を額の高さに掲げる動作を行います。
(3)抹香を香炉に落としてくべます。
(4)数珠をかけて合掌します。その後、遺影に一礼し、遺族にも一礼してから自分の席に戻ります。

宗派によって焼香の回数は異なる

宗派によって焼香の回数は異なる

焼香の基本的な動作は同じではあるものの、焼香の回数は宗派によって異なります。

真言宗

焼香は3度行い、押しいただく動作も行います。

天台宗

天台宗では1度または3度焼香を行うことが多いです。ただし回数や作法に明確な定めはないという説もあり、おしいただく動作も任意とされているといわれています。

曹洞宗

基本的に2度焼香を行いますが、1度目は押しいただき、2度目は押しいただかずに抹香をそのまま香炉にくべます。

臨済宗

押しいただかずに、1度焼香するのが一般的です。ただし押しいただく動作をせずに1度だけ行う場合や、曹洞宗と同様に2度行うが2度目は押しいただかずに行う場合もあります。

日蓮宗

日蓮宗では宗内宗派等によって違いがあり、焼香の回数は1~3回行います。信徒や参列者は1度、僧侶は3度行うという違いがある場合もあります。

浄土宗

浄土宗では焼香の回数は決まっていないものの、1度焼香するのが一般的のようです。押しいただく動作も行います。

浄土真宗・西本願寺

焼香は1度行います。押しいただく動作は行いません。

浄土真宗・大谷派

焼香は2度行います。押しいただく動作は行いません。

焼香のマナーと疑問点

焼香のマナーと疑問点

今までみてきたように、焼香には作法やマナーがあります。そこで焼香に関するよくある疑問を集めてみました。事前に明確にしておいて、礼儀にかなった焼香が行えるようにしましょう。

自分の宗派の焼香の作法に従ってもいい?

焼香は、自分の宗派の作法に従って行っても失礼にあたりません。宗派によって異なる回数や動作の違いなど全てを把握するのは困難です。それよりも自分の宗派の作法をよく知っておき、心を込めて焼香することこそが大切です。

焼香のみを済ませて帰る際のマナー

突然の訃報で通夜や葬儀に参列したくても、どうしても時間がとれない場合でも「焼香だけはしたい」と思うことはあるでしょう。事情があって焼香だけで帰ることはマナー違反にはならないものの、遺族に配慮し目立たないタイミングで退席する必要があります。
通夜に焼香だけしに行く際には、お通夜の開始時刻の15~30分前、もしくは通夜がひと通り終了して通夜振る舞いを行っている時間に行くのが望ましいとされています。開始前に行く場合は焼香のみとなってしまうことを遺族にお詫びし、通夜の開始準備をしている遺族の迷惑にならないように注意して行います。終了後に行く場合もまず遺族にお詫びしてから焼香し、その後は手短に挨拶をして帰るようにしましょう。
葬儀で焼香のみで途中退席する場合は、自分の焼香が終わったタイミングで式場から外に出るようにします。退席する際には同時に帰ろうとする人がいないか周囲を見渡し、もし退席する人がいる場合は外に出るタイミングをずらすようにします。家族などで複数人が退席しなければならない場合も、一度に式場から出るのではなく少し時間をあけてタイミングを見計らって一人ずつ出るようにします。なお途中退席したら会場に戻らないのがマナーなので、忘れ物などがないように注意しましょう。

焼香なしの葬儀に参列するとき

焼香なしの葬儀に参列するとき

焼香は葬儀などで行われる供養のひとつで、故人と向き合える大切な時間です。仏教式の葬儀では焼香が行われないということは、ほぼありません。
しかし仏教ではなく、神道やキリスト教の葬儀では焼香は行われません。神道では焼香の代わりに玉串奉奠が行われ、キリスト教では献花が行われることが一般的です。

自宅へ焼香に訪れたいとき

自宅へ焼香に訪れたいとき

通夜や葬儀の後に訃報を知った場合など、遺族の自宅を訪問して焼香したいと思うこともあります。葬儀後の弔問には適したタイミングがあり、葬儀の3日後から四十九日までに済ませるのが基本です。弔問は事前に遺族に連絡をして、許可をもらってから訪れるようにします。ただし四十九日を過ぎてから訃報を知った場合は、その後に弔問しても失礼にはあたりませんが、遺族には最近訃報を知ったことと、遅ればせながら弔問に伺いたい旨を伝えましょう。訪問時は香典のほか菓子などのお供物も持参し、服装は喪服を避けてダークカラーの平服で伺うのがマナーです。
自宅に弔問した場合は焼香の用意がないことも多く、焼香の代わりに線香をあげることになります。ちなみに線香のあげ方も、臨済宗や曹洞宗は1本、真言宗や天台宗は3本、浄土真宗は香炉に立てず寝かせるなど、宗派によって本数や作法に違いがあるので注意するようにしましょう。

合掌の際のマナー

合掌の際のマナー

焼香の際は合掌も行うので、合掌のマナーも確認しておきましょう。合掌には意味や由来があり、それに伴っていくつかの姿勢がありますが一般的な合掌の作法は以下のようになります。
指の間をしっかり閉じた状態で、左右の手のひらを胸の前で合わせます。この時、胸にぴったりつけるのではなく胸から少し離れた位置にし、手の指先が約45度の角度となるように傾けます。その後、一礼してから上体を起こして合掌をときます。
葬儀で合掌をするのは「故人が無事に浄土へ辿り着けるように」と願う意味があるので、マナーや作法とともに、心を込めて祈るようにしましょう。

まとめ

まとめ

焼香は葬儀等のマナーの中で比較的見落とされがちになっています。しかし焼香は、故人のために一人一人にあたえられる貴重な時間だといえます。故人としっかりお別れをするためにも、焼香についての知識や作法、マナーなどを把握しておきたいものです。全ての宗派については困難なものの、自分の宗派の作法やマナーを身につけておけばいざという時に慌てずにすみ、故人と丁寧にお別れすることができるでしょう。

證大寺|葬儀のご相談

證大寺|葬儀のご相談

江戸川区にある浄土真宗大谷派の寺・證大寺では、葬儀に関する相談も行っています。一般的な葬儀では、遺影を見てお経を聞き、焼香をして返礼品をもらって帰るというものがほとんどです。しかし證大寺は通りいっぺんの葬儀ではなく、意義のある葬儀となるようにという思いから「浄縁葬」と呼ばれる葬儀を提案しています。
「浄縁葬」では、葬儀は別れの場ではなく「出会い直しの場」とされています。故人と生前に出会えたこと、今までしてくれたこと、一緒に過ごしてくれたことは当たり前ではなかったと気づき、最後にありがとう、ごめんなさい、そして決して忘れませんと、出会い直す機会が葬儀なのだと考えられています。また最近では省かれることも多い「枕勤め」も行ってもらえるなど、遺族とのお別れの時間を大切にしてくれます。急な訃報で気が動転しがちな喪主には、喪主付き添い人がサポートを行うなど、きめ細かい心尽くしが用意されています。
心のこもった葬儀を希望される方は、ぜひ證大寺にご相談ください。

分骨に関する監修
仏教人生大学 講師
目﨑 明弘

PROFILE
證大寺 森林公園別院に所属。18歳から28歳まで京都の大谷大学で仏教を学ぶ。その後、真宗大谷派の本山である東本願寺の同朋会館で五年間勤務。現在は、銀座別院等で講師を担う。

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