浄土真宗における戒名とは?戒名を授かる方法とつけ方

葬儀

戒名というと「亡くなった際につける名前」という印象があるかもしれません。たしかに近年では亡くなってから授かる方が多いものの、戒名とは本来は生前に授かるものです。同様に、なぜ戒名をつけるのかといった意味も知らずにいる方も多いでしょう。そこで戒名とはどういったものか、どのように名付けられるかなどについて詳しく説明します。

目次
●浄土真宗は「戒名」ではなく「法名」
●釋(しゃく)ってどういう意味?
●在命中に戒名(法名)をもらうことはできる?
●浄土真宗における法名の付け方
●法名のご相談|證大寺
●まとめ

浄土真宗は「戒名」ではなく「法名」

浄土真宗は「戒名」ではなく「法名」

戒名の意味を紐解く前に、まず知っておきたいのがその呼び名についてです。多くの仏教では「戒名」と呼ばれますが、浄土真宗では「法名」と呼びます。また日蓮宗では「法号」といいます。宗派が違うから呼び方が違うだけではなく、考え方や目的が異なっています。

「戒名」の本来の意味とは

戒名とは、仏門に入ったという証として授かる名前のことです。仏教では「戒律」と呼ばれる規律があり、これを常に守らなければならないとされています。戒律を守る証として授かる名前であるため「戒名」と呼ばれています。もともとは修行者だけにあたえられていましたが、一般の人でも極楽浄土に導かれるようにという願いから、戒名を付ける風習が生まれたとされています。

浄土真宗の「法名」とは

浄土真宗の教えでは、戒律はありません。全ての人は亡くなると阿弥陀の導きにより浄土に行くというのが浄土真宗の考え方です。そのため悟りを得るための修行や戒律の順守は重視されません。
阿弥陀が人々を浄土へ導く力は「法」と呼ばれ、阿弥陀の力に由来するとして「法名」と呼んでいます。「法名」はいわば、阿弥陀の教えを暮らしの中でよりどころとする証といえます。浄土真宗でも亡くなった後に法名を授かることは多いですが、本来は生前に授かるべきとされています。

「戒名」の構成

戒名は基本的に4つの「号」で構成されていて、「院号」+「道号」+「戒名」+「位号」から成ります。宗派などによってルールが異なる部分もあります。

院号・院殿号

院号・院殿号は最初の部分に付ける号です。昔は天皇のみが使っていましたが、時代の変化とともに公家や将軍なども使用し、現代では社会的地位の高い人や信仰心の厚い人などにもあたえられています。

道号

道号とは本来は悟りを開いた者に与えられるもので、院号・院殿号が付いていなければ道号が戒名の始まりになります。現代では、故人の人柄や性格を連想させる文字を当てることが多いようです。

道号

戒名

現代では位牌や墓石などに刻まれる文字全てを戒名と呼んでいますが、本来は道号の次に続く2文字のことです。仏の世界での呼び名となるもので、生前の名前から1文字、お経などから1文字取って付けることが多いようです。

位号

位号は戒名の最後に付く尊称で、仏教徒としての位を表わします。本来の仏教の教えには戒名の位付けはないものの、現代では位号を見ると階級がわかるといわれています。男性は大居士・居士・信士、女性は清大姉・大姉・信女、子どもの場合は童子・童女などといった位号が用いられます。
位号は故人の信仰心や地域社会への貢献度などに基づいて決まり、一般的には授けられた位が高いほど戒名料が高くなるとされています。

浄土真宗の「法名」の構成

浄土真宗の「法名」は他の宗派の戒名とは異なり、一番上に「釋(しゃく)」の文字が入り、プラス2文字で構成されます。また法名の上に院号2文字を付けて「△△院釋○○」と6文字にする場合もあります。ただし他の多くの宗派にある位号は、浄土真宗では用いられません。

釋(しゃく)ってどういう意味?

釋(しゃく)ってどういう意味?

では浄土真宗の法名で一番上に入る「釋」とは、どういった意味があるのでしょうか。

浄土真宗で用いられる釋とは

釋とは、お釈迦様(釈尊)の弟子という意味です。法名の一番始めに「釋」の文字を入れることで、お釈迦様の弟子(仏弟子)ということを表わしています。

釋と釈の違いは何?

「釋」は、略した書き方の新字体では「釈」の文字が使われます。一般的にどちらの漢字を用いてもかまわないとされていますが、法名を授かる「帰敬式」などでは「釋」の文字が使われています。

男性は「釋」、女性は「釋尼(しゃくに)」

浄土真宗・大谷派では、男性は「釋○○」、女性の場合は「釋尼○○」という法名をつける場合が多いです。また浄土真宗・本願寺派では現在、男女とも「釋○○」とし、「尼」の文字が入らないようになっています。

在命中に戒名(法名)をもらうことはできる?

在命中に戒名(法名)をもらうことはできる?

戒名や法名が必要となってくるのは、「葬儀の際」「位牌に記す」「お墓の刻印する」など亡くなってからがメインとなっています。日常生活ではなくても問題ないため、多くの人は亡くなった後となることが多いですが、もちろん生前に授けてもらうことができます。
むしろ戒名や法名の意味を考えれば、「生きているうちに授けてもらう」というのが、本来の望ましいあり方です。また自身が納得できる戒名・法名を授けてもらえる、自分で費用を用意すれば残された家族に負担をかけずにすむというメリットもあります。

浄土真宗で法名(戒名)を授かるには

浄土真宗で正式に法名を授かるには、京都にある本山(東本願寺)に出向き、「帰敬式」を受ける必要があります。別名おかみそりとも呼ばれる「帰敬式」は、真宗門徒として新たな人生を歩み出すことを誓う儀式です。これを受式することで、仏弟子としての名前である「法名」が授けられます。とはいえ本山に行けない場合もあるでしょう。本山に代わり代理執行できるお寺もあるので、詳しくは菩提寺の住職に相談してみるとよいでしょう。

浄土真宗における法名の付け方

浄土真宗における法名の付け方

浄土真宗・大谷派の場合、基本的に男性の法名は釋〇〇、女性の法名は釋尼〇〇となります。

法名(戒名)の文字数 2文字の選び方は?

「釋〇〇」「釋尼〇〇」の〇〇の部分は住職が名付けることになり、お寺によって考え方はさまざまです。とはいえ法名とは仏弟子となった証の名前なので、経典の中の文字や仏教に関する文字の中から音の響きや意味などで選ばれることが多くあります。また俗名(生前の名前)から一字を取ったり、その方の生き方から連想される文字が用いられる場合も多いです。お寺によっては、希望の漢字があればそこから選んでくれることもあります。

法名のご相談|證大寺

法名のご相談|證大寺

江戸川区にある浄土真宗大谷派の寺院・證大寺では、本山の代理執行という形で法名の授与を行っています。

存命中に法名を授かる方が増えています

證大寺では故人となられた後はもちろん、生前からの法名の授与も行えます。近年の終活ブームの影響もあってか、生前から法名・戒名を授かろうという方が増えているそうです。実際、檀家に限って見てみても、全体の3割程度が生前に法名を授かっているといいます。
證大寺ではお寺にお墓がなくても、法名を授けてもらえます。生きているうちに法名を授かることは仏教的にも望ましいことですが、それ以外にもさまざまな恩恵があるようです。

法名は心の名前、羅針盤

生まれた時に命名された名前には、さまざまな思いが込められています。こんな子に育ってほしい、こういう人になってくれたらなど、名前には命名した人の願いが込められているといえるでしょう。
證大寺の住職は、「法名は心の名前、名前はひとつの羅針盤」だといいます「自分のこれからを指し示す『名前』が法名です。なにか迷うことがあっても、法名という『名前』に立ち返れば、おのずと自分を見つめ直すことができると考えています」。
生前に法名(戒名)を授かるというと「亡くなった後、家族に費用の負担をかけずにすむ」といった経済面に目が行きがちですが、法名を授かるというのは、心に羅針盤を持てるという意義の方が大きいといえるのかもしれません。

その人にふさわしい法名に

證大寺で法名を授かる場合、その人にふさわしい法名になるように、まずは時間をかけて話を聞いていくそうです。「法名をつけるにあたって『これからどのように生きていきたいか』という話をお尋ねしています。とはいってもすぐに簡単に答えられる方ばかりではありませんよね。そこで1時間半ほどかけてじっくりお話を伺います。対話することで、その人の考え方や人柄なども見えてきます」。こうして話を聞いた上で、住職がお経などから文字を選んで、候補となる法名を提示してくれるということです。「二つほど候補となるものをお出しして、それぞれの由来や意味などもお伝えしたうえで選んでいただきます」。
在命中に法名を授けてもらえば、自分にふさわしく納得できる法名になり、さらには将来の人生における羅針盤も得られる有意義な行いだといえるでしょう。

まとめ

まとめ

戒名や法名は、多くの人が亡くなってからつけるため、生前につけると「死」を連想して縁起が悪いと考える方もいますが、実際にはそんなことはありません。本来の意味を考えると、存命中にこそ戒名・法名を授かっておきたいものです。戒名や法名のことをよく知って、どんな名前にするかを自らの意志で決めることで、先々の人生ついて真剣に考える機会にもなるでしょう。

戒名・法名に関する監修
仏教人生大学 講師
加藤 順節

PROFILE
真宗大谷派の僧侶として、證大寺 船橋別院所属。證大寺 銀座別院で仏教入門講座など多数講師を務めており、さまざまなテーマで仏教から人生を学ぶ講座を開催している。

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