浄土真宗の納骨式|納骨の仕方・時期・お供え・服装マナーまでやさしく解説

浄土真宗の納骨式について、流れや時期、お供え物、服装・お布施のマナーまでやさしく解説。他宗派との違いや注意点も紹介します。
目次
●浄土真宗の納骨式とは?基本の考え方と他宗派との違い
●浄土真宗の納骨式|納骨の仕方と読経の意味・作法
●浄土真宗の納骨式でのお供え|お供え物の選び方と注意点
●納骨の時期はいつ?浄土真宗の考え方と目安
●浄土真宗の納骨式のマナー
●浄土真宗「證大寺」の納骨式
●まとめ―浄土真宗の納骨式は「形式よりも心」
浄土真宗の納骨式とは?基本の考え方と他宗派との違い
位牌や霊魂観が異なる?浄土真宗独自の考え方
浄土真宗では、位牌を用いないのが基本とされています。その理由は、故人はすでに阿弥陀如来の本願によって浄土に往生していると考えるからです。遺骨や位牌に霊魂が宿るとは見なさず、残された私たちは、阿弥陀仏の救いを喜び、感謝をあらわす生活を送ることが大切だとされます。
他宗派、たとえば曹洞宗や真言宗では、位牌に戒名や俗名を刻み、そこに故人の魂が宿ると考え、法要や納骨の場で位牌を本尊の前に安置します。一方、浄土真宗では魂が依りつく対象を設けず、亡き方はすでに仏さまとなっておられるという前提に立ちます。
もっとも、浄土真宗でも例外的に位牌を目にする場面はあります。四十九日までの間、仮位牌として白木位牌を安置し、忌明け後に焼納する場合がそれです。また、地域や家族の希望によって本位牌を作る例も見られますが、その際も宗派の考えを踏まえて寺院に相談することがすすめられます。
位牌の代わりに用いられるのが「過去帳」や「法名軸」です。真宗大谷派では法名軸を、本願寺派では過去帳を重んじる傾向があり、そこに歴代の法名や俗名を記し、仏前において感謝の念を新たにします。納骨式は、こうした教えを背景に、遺骨を安置し、故人とのご縁をあらためていただく時間とされています。
位牌の代わりになるものに関して詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
>過去帳など位牌の代わりになるもの一覧|費用比較と選び方のポイント
主要宗派ごとの比較表
宗派 | 位牌の位置づけ | 霊魂観 | 納骨時の祈りの目的 |
---|---|---|---|
浄土真宗 | 仏壇に安置することもあるが本質ではない | 遺骨に魂は宿らない | 仏法を聴聞し感謝を表す |
曹洞宗 | 位牌は故人の象徴 | 位牌に魂が宿ると考える場合あり | 成仏を祈る読経 |
真言宗 | 位牌を重視 | 霊魂が存在し供養が必要 | 成仏や加持祈祷 |
浄土真宗の納骨式|納骨の仕方と読経の意味・作法
納骨の仕方と法話・読経の意味
浄土真宗の納骨式は、地域や寺院によって細かな違いはありますが、おおむね次のように進みます。まず、参列者が本堂や納骨堂に集合し、導師(僧侶)が仏前で読経を行います。読経の経典は「正信偈」や「阿弥陀経」が多く、これは故人の成仏を祈るためではなく、参列者が仏法を聴聞し、阿弥陀仏の救いをあらためていただくためのものです。
読経の後、墓地や納骨堂へ移動し、納骨が行われます。遺骨を収めた後、焼香を行いますが、浄土真宗本願寺派では1回、真宗大谷派では2回が一般的です。香は額に押し当てず、そのまま香炉にくべます。焼香後は静かに合掌し、最後に本尊へ一礼します。これらの所作は、形式よりも心を込めて行うことが大切とされています。
焼香が終わると、導師による法話があります。法話は、故人をしのぶとともに、私たちが阿弥陀仏の救いの中に生かされていることを聞く時間です。その後、閉式の挨拶があり、解散となります。司会進行は僧侶が務める場合もあれば、遺族代表や葬儀社スタッフが担う場合もあり、寺院の慣習によって異なります。納骨式全体を通じて、静かに仏さまの前で心を向けるひとときとなります。
浄土真宗の納骨式でのお供え|お供え物の選び方と注意点
お供え物の基本は「簡素で清浄」なものが中心
浄土真宗、特に真宗大谷派では、仏さまに物質的な供養をするよりも、仏法に出遇い感謝の心をあらわすことが重んじられます。そのため、お供え物は華美を避け、質素で清らかなものが基本です。たとえば、白い菊やカーネーションなど落ち着いた色合いの花、日持ちのする果物や菓子がよく選ばれます。お菓子は、後で参列者に分けやすいよう、個包装された最中や羊羹、クッキーなどが適しています。
浄土真宗では、お供えは仏さまが召し上がるものではなく、法要後に「おさがり」として参列者で分け合い、故人をご縁に集まった人々がその場を喜び合うためのものです。このため、持ち帰りやすく、清浄で簡素な品が望まれます。お供え物は、見栄えよりも「心を添えて選ぶこと」が何よりも大切とされています。
避けるべきお供え物とその理由
納骨式のお供えには、控えたほうがよい品があります。まず、肉や魚などの生臭物は、殺生を連想させるため避けます。また、匂いの強い花(ユリやバラなど)や香りの強い食品は、参列者の中には苦手な方もいるため、不向きとされます。さらに、派手な色や光沢のある包装は場の雰囲気にそぐわないことがあります。
地域や寺院によっては、アルコール類の持ち込みを禁止している場合があります。お酒をお供えしたい場合でも、事前に寺院や納骨堂に確認することが大切です。浄土真宗の教えでは、形式や豪華さよりも、集う人々が心を向けやすい場を整えることが重んじられます。避けるべきお供え物を知っておくことは、儀式の調和を守ることにもつながります。
果物・菓子・花など、具体的な選び方のポイント
果物は、その季節ならではのものを選ぶとよいでしょう。春は苺やびわ、夏はぶどうやスイカ、秋は柿やりんご、冬はみかんなど、旬のものには自然への感謝や故人を偲ぶ気持ちが込められます。菓子は日持ちする和菓子や焼き菓子が適しており、最中や羊羹、カステラ、クッキーなど小分けにされたものが便利です。
花は白や淡い色合いを基調とし、白菊やスプレーカーネーション、淡い紫のリンドウなどがよく用いられます。組み合わせる際は、三本・五本・七本など奇数本でまとめるのが習わしです。落ち着いた色彩と香りの穏やかな花は、仏前の雰囲気をやさしく整えてくれます。こうした具体的な選び方を心がけることで、納骨式にふさわしいお供えとなります。
納骨の時期はいつ?浄土真宗の考え方と目安
四十九日・百か日・一周忌…時期の目安と背景
浄土真宗の納骨の仕方は、他宗派とは異なり、亡くなった方はすぐに阿弥陀如来の救いによって浄土に往生されると考えます。そのため、四十九日や百か日、一周忌といった法要は、故人の成仏を願うためではなく、仏さまへの感謝や故人とのご縁を確かめる大切な機会とされています。
納骨の時期としてもっとも多いのは四十九日です。この日は中陰の満中陰にあたり、親族が集まりやすい節目となるからです。お墓や納骨堂の準備が整わない場合や、心の整理に時間を要する場合には、百か日や一周忌に合わせて納骨を行うこともあります。
地域によっては、関西で見られる「お逮夜」のように、法要を前日に行う習慣があり、納骨日もずれる場合があります。それ以外の地域では慣習に差があるため、お住まいの地域や寺院の習わしを事前に確かめることが安心です。納骨は、遺族が無理なく集える日を選ぶことが大切です。
納骨のタイミングに決まりはあるのか?柔軟な考え方も
浄土真宗には、納骨の時期について厳格な決まりはありません。教義においては、故人は臨終の瞬間に阿弥陀仏の本願によって往生されるとされるため、「いつ納骨を行うか」は形式よりも遺族の事情が尊重されます。
例えば、お墓や納骨堂の工事が四十九日に間に合わず、百か日や一周忌に納骨を行うことがあります。また、遠方に住む親族の都合に合わせ、半年後や命日に合わせる例も少なくありません。こうした場合でも、浄土真宗の考え方から見れば、急ぐ必要はなく、むしろ心を込めて納骨できる日を選ぶことが大切とされます。
納骨を急がないことが失礼になるのではと心配される方もいますが、そのようなことはありません。大切なのは、遺族が心を整え、仏さまへの感謝と故人への想いを持って納骨に臨むことです。形式ではなく、心を大切にできる日を選ぶことが、浄土真宗の納骨式の本旨にかないます。納骨の時期について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
>納骨はいつ行うのが一般的?時期に決まりはない?四十九日・一周忌など最適な時期と流れ
浄土真宗の納骨式のマナー
納骨式での遺族側の挨拶と焼香のやり方
納骨式では、遺族代表が参列者を迎え、式の進行を担うことがあります。挨拶では「本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。故人を偲び、皆さまと共に仏法をいただくひとときとしたく存じます」といった感謝の気持ちと式の趣旨を簡潔に伝えます。
焼香は宗派によって回数が異なり、浄土真宗本願寺派は1回、真宗大谷派は2回が基本です。流れは次のとおりです。まず仏前に進み、軽く一礼します。香を右手の親指・人差し指・中指でつまみ、そのまま香炉にくべます(額に押し当てることはしません)。真宗大谷派ではこれをもう一度行います。終えたら静かに合掌し、心の中で「南無阿弥陀仏」と唱え、最後に本尊へ一礼して席へ戻ります。
この間、動作は静かに落ち着いて行いましょう。席に戻る際、遺族や他の参列者に軽く会釈をするのも礼儀です。
焼香の基本的なマナーについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
>焼香の意味とは?一般的な作法と基本的なマナーを解説
お布施やお礼の相場と渡し方のマナー
納骨式のお布施は、単独で行う場合は3〜5万円、四十九日など他の法要と併せる場合は5〜10万円程度が一般的です。金額は地域や寺院によって異なるため、事前に相談すると安心です。
お布施は奉書紙、またはのし袋に包み、表書きには「御布施」と墨で書きます。中袋には金額を漢数字で書き、裏面に住所と氏名を記入します。袋は慶弔どちらにも使える紫色、または弔事用のグレーの袱紗で包み、受付や直接僧侶へ渡します。手渡す際は両手で袱紗から出し、袋の正面を相手に向けます。
また、納骨式では、お布施のほか、香典袋を準備する場合もあります。香典袋の表書きについては、浄土真宗では四十九日前後であっても「御仏前」と書くのが一般的です。これは、故人がすでに阿弥陀如来の救いによって往生されているという教えに基づくものです。香典袋は白地に黒白の水引を用い、筆ペンまたは毛筆で丁寧に記入します。(関西地方では、黒白だけでなく双銀の水引を用いる場合もあります)
ボールペンやサインペンは避け、文字の乱れやにじみにも気を配りましょう。
僧侶や寺院への感謝の気持ちは、金額だけでなく言葉でも伝えることが大切です。納骨式終了後に僧侶や参列者へ、「本日はお忙しい中、誠にありがとうございました」とひと言添えるだけで、より丁寧な印象になります。納骨のやり方について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
>納骨のやり方完全ガイド|流れ・費用・注意点をわかりやすく
喪服?平服?男性・女性・子どもの服装の選び方
納骨式では法要に準じた礼儀正しい服装が基本です。男性は黒のスーツに白シャツと黒ネクタイ、女性は黒のワンピースやアンサンブルに黒のストッキングを合わせます。光沢のある素材や華美な装飾は避けましょう。
季節や天候にも配慮が必要です。夏場は通気性の良い素材を選び、ジャケットは式中のみ着用するなどで体温調節を。冬場は黒いコートやマフラーを着用できますが、本堂や納骨堂に入る前には脱ぐのが礼儀です。
子どもは動きやすい黒や紺の服、高齢者は防寒や着脱のしやすさを優先します。長時間の参列になる場合は、靴も歩きやすく疲れにくいものを選ぶとよいでしょう。服装は故人と参列者への敬意を示すものとして、控えめかつ心配りのある選び方が望まれます。
浄土真宗「證大寺」の納骨式
写真:證大寺の本堂
證大寺で行う納骨式の特徴
證大寺は、浄土真宗(真宗大谷派)の寺院です。宗派は大谷派に属しますが、納骨の受け入れにあたっては過去の宗旨・宗派を問わず、檀家でない方からのご相談にも応じています。納骨式はまず本堂で静かに読経をいただき、その後、墓地や納骨堂で納骨と焼香を行う流れが基本です。形式にとらわれるよりも、故人への感謝とご縁を確かめる時間を大切にしています。
施設は寺院が直接管理し、常に清掃と整備が行き届いています。椅子席中心の本堂は、高齢の方や小さなお子さま連れでも安心して参列できる環境です。申込みは、まず事前相談や見学で不安や疑問を解消し、その後、日程を調整します。当日までに埋葬許可証や遺骨、お供え物など必要な準備をご案内し、僧侶と共に穏やかに当日を迎えます。證大寺の納骨事例について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
>お寺の納骨|多彩な納骨先が選べる「證大寺」の納骨事例
お供えは「簡素で清浄」な品を基本とし、法要後には参列者で分け合う「おさがり」として用います。お問い合わせや見学希望は、下記のお電話や公式サイト・フォームから受け付けています。
證大寺 連絡先
電話:03-3653-4499(8:30~17:30)※葬儀に関する緊急のお問い合わせは365日24時間対応いたします。
公式サイト:https://shoudaiji.or.jp/
見学予約フォーム
證大寺 江戸川:https://edogawa2.eitaikuyou.life/#contact
森林公園 昭和浄苑:https://higashimatsuyama2.eitaikuyou.life/#contact
船橋 昭和浄苑:https://funabashi2.eitaikuyou.life/#contact
まとめ―浄土真宗の納骨式は「形式よりも心」
納骨式は、故人がすでに阿弥陀如来の救いにより浄土へ往生されたことを喜び、そのご縁に感謝する時間です。浄土真宗では、外形や華やかさよりも、静かに仏さまへ心を向けることを大切にします。時期やお供え、作法には一定の習わしがありますが、それ以上に重んじられるのは、遺族や参列者が安心して集い、共に念仏をいただくことです。形式に縛られず、心を込めて納骨に臨むことこそが、故人を敬い、自らのいのちを見つめ直す機縁となります。日常の中で立ち止まり、感謝の思いを新たにするとき、納骨式は静かに寄り添ってくれるでしょう。