皆さん今日は。「お寺の掲示板」の時間です。この時間は、毎月一つの言葉を、仏教で捉えるとどうなるのか、ということをお話しさせていただくお時間です。
今月の言葉は『微笑(みしょう)―ほほえみ―』でございます。「ほほえみ」を漢字で表すと、微かに笑うと書きます。一般的には「びしょう」と読みますが、仏教では濁らず「みしょう」と読みます。
この「ほほえみ」を表わす微笑は、仏教ではとても大切にされる言葉なのです。
お釈迦さまは覚りを得て仏さまと成られました。覚りを得た仏さまは、心に迷いがありません。こだわりの心から解放され、すべてをありのままに受け止めておられるから、常に平常心。無愛想な顔のことを仏頂面(ぶっちょうづら)というのも頷けますね。
ところが、そんなお釈迦さまが微かにほほえむ、つまり「微笑(みしょう)」するという場面がお経に出てまいります。『観無量寿経』というお経です。このお経では、阿闍世という王子が、父である頻婆沙羅王を牢獄に閉じ込め、王を助けようとした母・韋提希をも牢獄に閉じこめてしまうという事件が語られています。我が子に父親ばかりか、母親である自分までもが傷付けられたことに、大いに悲しみ、「うちの子に限って、なぜそんなことをするんだ!」と、現実を受け止めることができずに、悶え苦しみます。韋提希を助けに現れたお釈迦さまに愚痴や不満をぶちまけます。お釈迦さまはただただ黙って聞いておられました。韋提希は自分の哀れな姿をお釈迦さまの前でさらけ出していくうちに、自分自身でけっして壊れることのない本当の幸せを求めていることに気付かされるのです。そして、お釈迦さまに「生まれた意義と生きる喜びをみつけたいです。どうか私にそのことを教えてください。」と懇願します。
その言葉を聞いたお釈迦さまは微かに笑みをうかべます。お釈迦さまは、この世に生まれてきた本当の願いに出遇えた喜びを「微笑」することで示されたのです。
自分が生まれてきた意義と生きる喜びを、ほほえみであらわすなんて素敵だと思いませんか?
どうか皆さまにも、ほほえみ溢れる素晴らしい出遇いがありますように。
春江町の證大寺では、一年中休むことなく、毎朝8時半から「お経と法話の会」が勤まっております。また毎月28日の朝8時半には、掲示板のお話をさせて頂きます。参加費・予約不要で、どなたでも御参加いただけますので、是非お参りください。お問い合わせは3653ー4499・3653ー4499まで。
この番組は證大寺の提供でお送りいたしました。またお会いしましょう。