浄土真宗におけるお彼岸|その意味とお墓参りの作法をわかりやすく解説

法事

仏教ではお彼岸は重要な行事とされていて、たいていの宗派では彼岸会と呼ばれる法要が開かれ、お墓参りが行われるのが一般的です。浄土真宗でもお彼岸には法要が営まれ、お墓参りも行われますが、浄土真宗では他宗のお彼岸とは意味合いが異なる部分があります。そこで浄土真宗のお彼岸について、またお墓参りの作法などについて説明します。

目次
●お彼岸の期間は年2回ある
●浄土真宗のお彼岸とは?その意味と墓参りの関係
●浄土真宗ではお彼岸で何をするの?
●浄土真宗におけるお彼岸のお墓参り、準備と当日の流れ
●お彼岸のお墓参り、知っておきたいマナー
●浄土真宗 證大寺のお彼岸について
●まとめ

お彼岸の期間は年2回ある

お彼岸の期間は年2回ある

お彼岸というと季節や時季を表す言葉のように捉えている方もいますが、お彼岸は仏教に由来したもので、日本独自の風習です。お彼岸は年に2回、春と秋にあります。

春分の日・秋分の日を中心とした7日間

春のお彼岸は、春分の日を中心とした前後3日ずつの7日間、秋のお彼岸は秋分の日を中心とした7日間をさします。彼岸の初日は「彼岸入り」、最後の日は「彼岸明け」と呼ばれます。春分の日・秋分の日は、太陽が真東から昇り真西に沈む日となるため、毎年日にちが変わります。概ね春分の日は3月20~21日、秋分の日は9月22~23日頃となります。

浄土真宗のお彼岸とは?その意味と墓参りの関係

浄土真宗のお彼岸とは?その意味と墓参りの関係

お彼岸は仏教で大切にされている行事ですが、では浄土真宗と他の宗派では、お彼岸の意味合いにどのような違いがあるのでしょうか。

仏教の教えに基づく大切な行事

仏教では彼岸とは「悟りの世界」であり、浄土となる「あの世」を指すものです。それに対応して「この世(現世)」は「此岸(しがん)」と呼ばれます。お彼岸は、太陽が真東から昇り真西へと沈むことから、あの世である彼岸と現世の此岸が最も近くなる時期だと考えられています。
そのため他宗では、「お彼岸には先祖や故人の霊がこの世に還ってくる」とされ、追善供養するという意味合いでお彼岸には法要が行われ、故人や先祖への供養としてお墓参りが行われます。

浄土真宗のお彼岸の持つ意味

しかし浄土真宗では、亡くなるとすぐに成仏して仏様になるとされています。また浄土真宗には霊という概念もありません。従って故人や先祖の霊がこの世に還ってくることもなく、追善供養を行う必要もないとされています。浄土真宗にとってのお彼岸は、本尊である阿弥陀様に感謝するもの、自分も浄土へいけるよう阿弥陀様の教えをしっかり聞くためのものです。またお墓参りは、仏様に感謝の気持ちを伝えるためのものとされています。

浄土真宗ではお彼岸で何をするの?

浄土真宗ではお彼岸で何をするの?

浄土真宗では追善供養は行わないものの、お彼岸には法要が行われます。またお墓参りに行くことも慣例となっています。

讃仏会(さんぶつえ)を行う

浄土真宗のお彼岸の法要は、讃仏会(さんぶつえ)と呼ばれています。追善供養ではなく仏様へ感謝を伝え託された願いを確認する大切な場とされています。お寺での法要では、極楽浄土を思い描くことができるよう、前卓に季節に合わせた打敷が掛けられ、色鮮やかな季節の花が生けられることが多く見られます。また大抵のお寺では法要の後には法話も行われ、参拝者同士が交流する場にもなっています。

お彼岸にお墓参りをする理由:感謝の気持ちを伝える

浄土真宗でもお彼岸には、故人や先祖のお墓参りを行います。お墓参りもまた追善供養という目的だけではなく、故人や先祖との繋がりを再確認するために行うものと考えられています。仏様に日頃の感謝の気持ちを伝え、平穏な日々へ感謝するためでもあります。

浄土真宗におけるお彼岸のお墓参り、準備と当日の流れ

浄土真宗におけるお彼岸のお墓参り、準備と当日の流れ

お彼岸のお墓参りでは、基本的には通常のお墓参りと同様です。しかしお供え物でお彼岸独特のものもあります。以下では、お墓参りの準備と当日の流れについて説明します。

事前の準備:お墓参りの持ち物と服装

お墓参りに行く場合、前日までに必要なものを揃えておくようにするといいでしょう。お参りで忘れがちなのが数珠です。お墓に手を合わせる時にはあった方がよいでしょう。またお寺での法要に参加する場合は必ず持って行くようにしましょう。その他の持ち物は、以下のような物を用意し、服装にも気をつけましょう。

墓石を掃除するための道具

お墓参りでまず行うのは、お墓の掃除です。そのための清掃用具を持参しましょう。寺院や霊園によっては桶や柄杓は貸し出している所も多いです。しかし雑巾やタオル、軍手、ほうきやちりとり、ゴミ袋などは基本的には自分たちで持参するようにします。

詳しくは下記でも紹介しています。
https://shoudaiji.or.jp/baton/post203/#hukusouyamochimono

お供え物(お花、お菓子、飲み物など)

お墓に供えるお供え物も準備しておきましょう。花のほか、お供え用の菓子や果物、飲み物なども持参しましょう。故人の好物をお供えするのもよいでしょう。お供え物は墓石にじかに置くと痛みや汚れの原因となるので、下に敷くための半紙も持参するようにします。
お彼岸ならではのお供え物としては「ぼたもち」と「おはぎ」があります。餡をつかった和菓子で同じ食べものですが、春は「ぼたもち」、秋は「おはぎ」と呼ばれます。

線香、ろうそく、ライター

線香、ろうそく、ライター

お参りに欠かせないものとして、ろうそくや線香があります。仏教では火は神聖なものとされていて、お墓参りでろうそくを灯すと周囲を清められると考えられています。ライターなどでろうそくに火を点け、その火で線香に火をつけるようにします。ろうそくや線香の炎を消すときは、口で吹かずには手で扇いで消すようにしましょう。

服装は清潔感のあるものを選ぶ

お彼岸でのお墓参りの服装は、普段着で問題ありません。お墓の掃除をしっかり行いたい時は、動きやすい服装を選びましょう。ただし派手だったり露出が多かったりする服装は避けるべきです。一般的には清潔感のある落ち着いた服装が好ましいとされています。
また、お寺の法要に参加する場合や親戚などが集まる場合は、普段着ではなくスーツやワンピースなどフォーマルを少し意識した服装がおすすめです。

お彼岸当日の流れ

お彼岸当日の流れ

お墓参りの当日は、準備したものを持参して墓地や霊園を訪れます。自分の家のお墓に行く前に、まずお寺の本尊に礼拝するのを忘れないようにしましょう。

お墓の掃除

お墓参りでは最初に掃除を行います。水汲み場で手を洗い、墓前で合掌・礼拝をしてからお墓の掃除を始めます。掃除に必要な水を入れる桶や柄杓などの掃除用具を借りる場合は、黙って借りずにお寺や霊園の人に声をかけるようにしましょう。

お供え物

墓石を洗い終えたら、花筒の水を入れ替えて新しい花を飾ります。持参したお供え物は、半紙を敷いてから置くようにします。

ろうそく、線香への点火

ろうそく、線香への点火

ろうそくに火を灯し、線香に火をつけます。浄土真宗では線香を焚く場合、2つに折って横に寝かせるようにします。ただし寝かせる場所がないお墓の場合は、長いままで立ててもかまいません。

合掌し、ご先祖様へ語りかける

最後にお墓にお参りをします。立ったままではなくしゃがむなどして、低い位置になってから合掌礼拝するようにしましょう。浄土真宗では手を合わせたらまず「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えます。その後、先祖や故人に近況の報告などをして語りかけます。家族など複数人で来ている場合は、一人ずつ順番にお参りしましょう。お参りが終わったら、後片付けをしてから帰ります。

お彼岸のお墓参り、知っておきたいマナー

お彼岸のお墓参り、知っておきたいマナー

お墓参りに行く際は、いくつかマナーがあるので、事前に知っておき守るようにしましょう。

お供え物|タブーとされているもの

お墓に供える花は「トゲや毒を持っている花」は避けるべきとされています。また周囲へ迷惑がかからないよう、香りがきつい花や花粉が落ちやすいものも避けましょう。お供え物は不殺生の精神に反するとして、肉や魚などの生ものはタブーとされています。ただし故人の好物を供えたい場合などで調理済みのものなら、それほど気にしなくてもよいでしょう。

その他のマナー|周りの人への配慮も忘れずに

お墓にお供え物を置いて、そのまま置きっぱなしにするのは現代ではマナー違反といえるでしょう。お供え物を狙ってカラスなどの害鳥が来たり、腐敗して虫がわいたりするなどのおそれがあるためです。お供え物は持って帰るようにします。またお参りに来た人たちで、その場で食べてもかまいません。墓地や霊園によっては供えた花も持ち帰るルールとなっているところもあります。お墓のある墓地・霊園によってルールは異なるので、それぞれのルールを守ってお墓参りするようにしましょう。
お彼岸の時期はお墓参りに来る人が多いため、墓地や霊園が貸し出している桶や柄杓なども、数が足りなくなる場合もあります。ひとりでいくつも独占せず譲り合うようにし、使い終わった後は速やかに返却しましょう。

浄土真宗 證大寺のお彼岸について

浄土真宗 證大寺のお彼岸について

写真:森林公園昭和浄苑内をご案内する様子

證大寺は東京都江戸川区にある浄土真宗大谷派のお寺です。お寺にある墓地のほかに、埼玉県で「森林公園昭和浄苑」、千葉県では「船橋昭和浄苑」という2つの霊園を直接運営しています。お寺でも2つの昭和浄苑でも、お彼岸には彼岸会法要が行われます。予約の必要はなくお墓参りに来て法要があることを知って参加する方も多いということです。
お彼岸は、法要に参加したり法話を聞いてみたりするのに良い機会となります。證大寺や昭和浄苑にお墓がなくても誰でも参加できるので、興味のある方は證大寺や昭和浄苑へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
詳しくは下記のリンク先をご参照ください。
證大寺:https://edogawa2.eitaikuyou.life/
森林公園 昭和浄苑:https://higashimatsuyama2.eitaikuyou.life/
船橋 昭和浄苑:https://funabashi2.eitaikuyou.life/

まとめ|お彼岸のお墓参りで、ご先祖様との絆を深めましょう

まとめ|お彼岸のお墓参りで、ご先祖様との絆を深めましょう

浄土真宗でのお彼岸のお墓参りは、仏様に感謝し、故人や先祖との繋がりを再認識して大切な故人さまが今の私をみたらどのように声を掛けてくれるのか、生前大切な故人さまから託されてきた言葉などを改めて確認して出遇い直す機会なのです。現代では日々の生活に追われてお墓参りに行くきっかけが失われ、お墓参りへの足が遠のいてしまっている方もいるかもしれません。そんな方こそお彼岸を機会にして、お墓参りを通して親先祖から続いているいのちに感謝をいたしましょう。

浄土真宗におけるお彼岸に関する監修
仏教人生大学 講師
梅原 博

PROFILE
1973年に真宗大谷派にて得度。真宗学は大谷大学にて学ぶ。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。真宗大谷派名古屋別院では法話講師を務めている。

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