おひとりさまの「終活」でやるべき10の準備

終活

「おひとりさま」とは広義では、1人で生活を営んでいる方のことを指します。また「終活」とは人生の終わりに向けた活動のことです。ひとり暮らしは気楽な反面、いざというときに頼れる人がいないともいえます。そこで、おひとりさまにとって終活がなぜ重要なのかを解説するとともに、おひとりさまの終活でやるべきことについても紹介します。

目次
●おひとりさまに終活が必要な理由
●おひとりさまの終活でやるべき10のこと
●おひとりさまの終活でよくある質問
●終活の相談ができる窓口もある
●證大寺|終活のご相談を行っています
●まとめ

おひとりさまに終活が必要な理由

おひとりさまに終活が必要な理由
おひとりさまが老後を迎える際には、自己決定と自己責任が求められることになります。老後の生活設計やその準備について、誰かに任せるのではなく自分でやらざるを得ません。

65歳以上のおひとりさまは、年々増加

おひとりさまは、生涯独身の人だけではありません。今は夫婦で生活していても、配偶者に先立たれることもあるでしょう。子どもがいても同居せず、ひとり暮らしとなる場合も多いようです。内閣府のデータを見ると、65歳以上でひとり暮らしする人の数は年々増加しています。2020年には男性では全体の15%、女性では22.1%がひとり暮らしとなっていて、今後も増加し続けると推測されています。

おひとりさまこそ終活にメリットあり

おひとりさまの場合、手助けしてくれる身内がいなかったり、いても遠方で思うように助けてもらえなかったりすることが多いでしょう。だからこそ終活を行って、いざというときのために備えておく必要があります。終活を行うことで不安を抑えられ、心の安定にもつながります。
また「おひとりさまは寂しい人生だ」と感じる方もいるかもしれません。しかし前向きに捉えれば、おひとりさまなら自己決定でき、将来も自分の思い通りに生きることができます。ポジティブに生きていくためにも、終活には意義があるといえるでしょう。

おひとりさまの終活でやるべき10のこと

おひとりさまの終活でやるべき10のこと
おひとりさまの終活といっても、基本的には家族がいる方の終活と同じです。ただし、おひとりさまならではの注意すべきポイントや、やっておきたいこともあります。

1.所有物など身辺の整理

すぐに始められるのが身辺の整理です。ひとり暮らしでも、長く暮らしていると物が増えてしまうのはよくあることです。いらない物を処分して、家の中を整理しましょう。所有物を把握しながら整理することで、本当に必要な物はなにかがわかってくるというメリットもあります。また、片付かないことから起こるストレスも軽減できます。さらにいえば物につまずいてケガをするリスクも抑えられるでしょう。物が多すぎて自力で整理するのが困難な場合は、代行業者に依頼する方法もあります。

2.金銭・不動産・株式などの財産の把握・整理

預貯金がどのくらいあり、不動産や株式などがどのくらいの価値となっているのかなど、自分の財産を把握することも終活には欠かせません。財産の把握は、今の生活にどのくらいのお金がかかっていて、今後どれくらい必要なのかを考えるきっかけになります。また財産が把握しやすいよう、使っていないカードや口座類は解約などして整理しておきましょう。財産目録を作って、どこにどんな財産がどれだけあるかわかるようにすれば、今後の住まいや介護の準備を考える際にも役立ちます。

3.住まいの見直し

3.住まいの見直し
現在はなんの不自由も感じていなくても、高齢になると身体機能などが低下しがちで怪我をするリスクが高まってきます。手すりをつけるなどバリアフリー対策を早めに行って、住みやすい環境を整えるようにしましょう。
また一戸建ての場合は、この先も家のメンテナンスができるか否かも考えたいものです。外壁や屋根、庭木などのメンテナンスは、高齢になるほど億劫になりがちです。そのため最近では自宅を売却し、老後に駅近のマンションなどに住み替えるケースも増えています。さらに先々のこととして、高齢者向け住宅や老人ホームへの入居も検討してみるのもよいでしょう。

4.孤独死しない環境づくり

警察庁のデータによると2024年1〜3月の3ヶ月間で、一人暮らしの方が自宅で死亡した65歳以上の方は約17,000人にのぼるとされています。この数値を年間ベースに単純に置き換えた場合、年間で約68,000人の高齢者が孤独死していると推計できます。
おひとりさまにとって、孤独死の心配はつきものです。これを防ぐために日頃から地域のコミュニティなどに参加するなどして孤立しないように配慮し、安否確認してもらえる環境づくりを心がけましょう。身内が側にいなくでも、なにかあった時に頼れる友人・知人がいると心強いものです。
最近では、電話や訪問、人感センサーなどで見守りサービスがあり、民間業者だけでなく自治体が行っているケースもあるので、まずはどんなものがあるのか、調べることから始めましょう。

5.いざという時の医療や介護の準備

高齢になるほどケガや病気のリスクは上がります。現在は元気で病院とは無縁の生活でも、早めに主治医を見つけておくようにしましょう。主治医がいれば万一倒れた場合でも、適切な診察をしてもらえる可能性が高くなります。おひとりさまの場合、困るのが急に入院となってしまうこと。着替えなど入院に必要なものが自分で用意できない場合もあります。備えとして、入院時に必要なものをバッグなどにまとめたものを用意するのもいいでしょう。置き場所だけ伝えて運んでもらうだけの状態にすれば、いざという時に安心です。
また介護についても考えておくようにしましょう。介護が必要な状態になってから施設などを探すのは困難で、自分の希望とは異なる施設に入居せざるを得なくなってしまうこともあります。元気なうちにあらかじめ目星をつけて、準備しておくとよいでしょう。

6.身元保証人・身元引受人の決定

身元保証人とは、病院に入院したり施設に入居したりする際に、本人に代わって手続き等を行う連帯保証人のことを指します。また身元引受人は、死亡時に身柄を引き受け、施設退去時の手続きなどを行うことになります。おひとりさまでも家族がいる場合は、家族に依頼するのが一般的です。しかし身内がいない場合や、事情があって家族に頼めない場合は、身元保証会社に依頼することも検討しましょう。契約の内容によりサービスの範囲は異なりますが、家族や親族に代わって引き受けてくれるので安心です。

7.相続の整理・遺言書の作成

7.相続の整理・遺言書の作成
財産がある場合は、遺産をどのようにしたいか、相続についても考えておきましょう。遺言書がなければ遺産は法定相続人が相続することになるのが一般的です。ただし遺言書があれば、法的相続人以外の人にも相続させることができます。また遺贈寄付を考えている場合も、遺言書に残しておくようにしましょう。

8.お墓や葬儀の検討

先祖代々のお墓があり、そのお墓を継いでくれる人がいれば安心です。しかし、入るお墓が決まっていない方もいるでしょう。お墓は生前予約という形で、生きているうちに購入することができます。おひとりさまでお墓の後継ぎがいない場合は、永代供養付きのものもあります。これは承継者に代わって霊園や墓地などを管理しているお寺が、永代に渡って供養してくれるというものです。永代供養付きのお墓には、樹木葬、納骨堂、合祀墓などがあります。生前予約する場合は、どのようなお墓に入りたいかをよく吟味して選ぶようにしましょう。
葬儀もまた生前予約することができます。生前予約することで自分が希望する葬儀が行え、親族などの手間や負担も軽減できます。ただし葬儀社などによってプランやサービスが異なるので、複数を比較検討して選ぶようにしましょう。

9.死後事務委任契約の検討

死後事務委任契約とは、亡くなった後の事務処理を生存中に第三者に委任するというものです。
死亡届の提出のほか、健康保険証や介護保険証、マイナンバーカードなどの返納、年金の手続きなど役所への事務手続きを代行してくれます。知人や友人に口約束で頼むのとは違い、契約書を交わすため法的な拘束力があります。また契約内容によっては、生前に指定した連絡先に訃報を知らせ、生前予約した葬儀の執行やお墓への納骨までお任せすることができます。死後事務委任契約は、身元保証サービスを行っている会社などで取り扱われています。費用相場は事業者やプラン、契約内容によって異なるので、複数を比較して検討するようにしましょう。

10.エンディングノートの作成

10.エンディングノートの作成
エンディングノートは自分の思いや希望を家族に伝えるものとして、終活する方におすすめされています。おひとりさまの場合「伝える相手がいないから書く必要がないのでは?」と思う方もいるでしょう。しかしエンディングノートは、終活の計画を具体化していくのに便利なツールとなります。書きながら終活をすすめていくと、自分の考えややるべき事がみえてくるでしょう。おひとりさまも「終活の友」としてエンディングノートを活用することをおすすめします。

エンディングノートとは

エンディングノートには、将来病気になった場合の治療について、葬儀やお墓についてなど、自らの希望を記載するものです。またそれに加えて、財産の情報、加入保険の情報などを書くのが一般的です。また友人・知人の連絡先のほか、残された友人たちへのメッセージを書き残すことも推奨されています。そのほかに「自分史」のページを作る方も多く、これまでの人生を振りかえることで、この先の人生の目標が明確にできるといわれています。
エンディングノートには決まった形式はないので、自由に書き留めることができます。なにから書けばいいかわからない場合は、市販されているものを利用してもいいでしょう。またインターネットなどでも入手できるほか、自治体などで配布されている場合もあります。

なんどでも書き直せるので更新も

エンディングノートは1度書けば終わりというものではなく、何度でも書き直すことができます。終活するなかで、たとえば葬儀やお墓を生前予約したなどで情報が新しくなったら書き直して更新しましょう。もちろん書いた当初と考えが変わった場合も更新してかまいません。
ただしエンディングノートには、法的な拘束力はありません。財産、特に遺産については遺言書など法的拘束力があるものも用意しておくようにしましょう。また重要な個人情報を記載することになるので、保管場所には注意が必要です。とはいえ必要なときには確実に伝わるようにしたいため、信頼できるごく少数の人にだけ保管場所を伝えるなど、対策を考えるようにしましょう。

おひとりさまの終活でよくある質問

おひとりさまの終活でよくある質問
おひとりさまが終活に取り組む上で、よくある質問をまとめましたので参考にしてください。

Q.終活はいつから始めればいいですか?

終活を始める年齢に決まりはなく、何歳から始めてもかまいません。一般的には、還暦や定年退職など、人生の節目をきっかけに始めるケースが多いようです。ただし、おひとりさまの場合はなるべく早く、体力や気力、判断力が十分なうちに始めるのが理想です。自己決定して自分で進めて行く必要があるので、気力や判断力が欠けると契約等を結ぶのも困難になってしまいます。

Q.終活にはどのくらいの費用が必要ですか?

身辺の整理や財産の把握・整理などは、費用をかけなくても行うことができます。しかし身内に代わって保証や事務手続きを委任する場合は、事業者と契約して費用を支払う必要があります。身元保証・引受の制度を利用するには30~150万程度、死後事務委任契約には50~150万程度、葬儀の生前予約は40~150万程度、墓(永代供養)の生前予約は5~30万程度の費用が相場となっています。

Q.おひとりさまの場合、死後の財産はどうなりますか?

おひとりさまの遺産は、遺言書がない場合は法定相続人が相続することになります。ただし法律では遺産を相続する人の範囲や順番、引き継ぐ割合などのルールが定められているため、親族でも範囲外となれば相続人になれません。法定相続人がいない場合は国庫に移動し、国の財産となります。
遺言書があれば法定相続人以外の方に遺贈したり、死後の財産を社会貢献活動などを行う団体に寄付したりすることができます。遺贈や寄付を考えている場合は、公正証書としての遺言書を作っておくようにしましょう。

終活の相談ができる窓口もある

終活の相談ができる窓口もある
終活を行おうとした時に、疑問や悩みが生まれることもあるでしょう。そんな時は終活の相談ができる窓口を利用するのもひとつの方法です。現在、一部の自治体では終活のサポートを行っていて、そのような自治体は増加傾向にあります。相談費用自体は基本的に無料なので、まずはお住まいの市区町村に問い合わせてみるとよいでしょう。ただし自治体によっては相談できる内容が限られている場合もあります。
民間にも終活の相談窓口が多数あります。終活に詳しい「終活アドバイザー」などに対応してもらえ、必要に応じて各種専門家を紹介してくれるサービスなどがあります。相談には費用が必要で、事業者によって相談できる範囲や金額が異なります。民間の終活相談窓口は、無料で終活セミナーなどを行っている事業者が多いので、まずは無料サービスを利用するなどして事業者を見極めるようにしましょう。

證大寺|終活のご相談を行っています

證大寺|終活のご相談を行っています
写真:森林公園昭和浄苑でのご相談の様子
證大寺は東京都江戸川区に本坊を構え、千葉「船橋昭和浄苑」・埼玉「森林公園昭和浄苑」と2つの霊園を直接運営しているお寺です。終活の相談も無料で行っていて、各種手続きについてはもちろん、何をどれくらい整理すればいいかなどの不安にも寄り添い、必要に応じて専門家とも連携も取ってくれます。證大寺では紹介手数料などはいただかず、専門家への相談にお寺の担当者が寄り添うので安心です。(※無料相談はお墓の生前予約など、證大寺とご縁がある方が対象となります。)
おひとりさまで終活に悩んだ時に、證大寺へ相談して無事解決した例も多くあります。そんな事例の一部を紹介します。
證大寺について詳しくはこちら

おひとりさまの終活事例:A様の場合

A様は80代女性のおひとりさまです。終活の一環として老人ホームへの入居を希望しており、證大寺へ相談に訪れました。證大寺では専門家と一緒に希望条件にあう施設を探し、数か所の見学にも同行しました。候補の1つであった施設に、昭和浄苑にお墓を持つ居住者がいたため、その方とA様がお話できる機会をセッティング。施設の話が居住者から直接聞けて安心したとのことで、その施設に入居が決まりました。A様からは「元気なうちに相談に乗ってもらい、実際のご利用者から話を聞くことができたのが大きな決め手になりました。自分一人ではなかなか決められなかったので、相談できてありがたかったです」という声をもらえました。

おひとりさまの終活事例:B様の場合

B様の場合は少々複雑です。60代女性であるB様は、終活として自分用のお墓も購入済みでした。お墓も決まってやれやれと思っていたところ、長年別居していた夫から急に連絡が入り、「体調を崩し生活保護を受けることになるかもしれない」と告げられたそうです。B様が暮らしている家は、夫の名義となっていたものの、これまで一切の支援なくB様だけで住宅ローンの支払いを行ってきました。しかし夫が生活保護となると自宅を手放すことになるのではと心配になり、證大寺に相談にやってきました。B様は弁護士に相談することも考えたそうですが、このような案件は通常成功報酬等で200万円くらい費用がかかるとのこと。しかし證大寺に相談して専門家を通じて行うことで、1/10程度の費用で収まったそうです。B様は「自宅を手放すこともなく、無事離婚することができました。これから先の生活の基盤が守れ、とても感謝しています」と話されました。

まとめ

まとめ
おひとりさまにとって終活は、満足できる人生を過ごし、満足しながら終われるようにするために欠かせないものだといえるでしょう。人生にアクシデントはつきものなので、考えていた通りにならないこともあるかもしれません。しかし終活を行うことで、なにを大切にしたいかなど自分の気持ちを確認することができます。先の人生をより有意義にするために、おひとりさまこそ終活に取り組むようにしましょう。

おひとりさまの「終活」に関する監修
仏教人生大学 講師
目﨑 明弘

PROFILE
證大寺 森林公園別院に所属。18歳から28歳まで京都の大谷大学で仏教を学ぶ。その後、真宗大谷派の本山である東本願寺の同朋会館で五年間勤務。現在は、銀座別院等で講師を担う。

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