終活とは?あなたの人生の最後を豊かにするために

終活

「終活」は2012年に「新語・流行語大賞」に選出されました。今や世の中に定着した言葉となっています。しかし一方で、具体的にどのようなことをすればいいのか、よくわからない方も多いのではないでしょうか。そこで終活とはどのようなもので、なぜ行ったほうがいいのかといった概略から具体的な進め方までまとめて解説します。

目次
●終活とは
●終活をはじめるタイミング
●終活の進め方|ステップごとの終活手順
●終活の注意点とアドバイス
●終活の相談ができる窓口

終活とは

終活とは

終活とは「人生の終わりのための活動」ということになります。自らの死を意識して、人生の最後を迎えるための準備、人生の総括をするものとされています。
終活の中には、財産の整理など(1)「手続きの終活」と、(2)人生の最後を見据えた「心構えの終活」があります。この2つを実践することで、「終活」が「生活」となり、最後までよりよく生き生きと暮らすことを目指そうとするものです。
本記事では、終活の意義などに触れながらも、(1)「手続きの終活」をメインに説明していきます。

終活の意味や目的

終活について「人生の終わり」「自分に何かあったとき」のものだといわれると、死への準備のようで「縁起でもない」と思ってしまう方もいるでしょう。またネガティブに捉えていなくても「自分が死んだ後、残された家族に迷惑をかけないために行うもの」というイメージも多いでしょう。
しかし、終活の本来の意味や目的は、これまでの人生を振り返りながら人生の最期について考えることで、「今後をよりよく生きる」というポジティブなものです。終活を行うことで老後をどのように過ごすか考え、これからを前向きにかつ充実させようというものです。同時に、人生の最後を迎える不安も小さくすることができるでしょう。

終活をはじめるタイミング

終活をはじめるタイミング

終活をはじめるタイミングは人それぞれ、特に決まりはありません。早い人は30~40代くらいから取り組んでいます。とはいえ一般的にはどれくらいの年齢で始めているものか、気になるところでしょう。ある調査によると「60代から終活を始めたい」と考えている人が多数を占めているそうです。60代で定年となれば時間に余裕がもてるようになるからと考えられます。
そのほかにも、身近な人が亡くなった、大病を患った、子どもが結婚した、孫が誕生したなどがタイミングとなって、終活をはじめようと考える方も多いようです。
つい「もっと高齢になってから」と後回しにしがちですが、終活では財産や身辺の整理など決めなければならないことが多く、そのための手続きも必要です。体力や気力が十分にある元気なうちから取り組んだ方が億劫にならず、人生も豊かにすることができるのではないでしょうか。

終活の進め方|ステップごとの終活手順

終活の進め方|ステップごとの終活手順

前述したとおり、終活には(1)「手続きの終活」と(2)「心構えの終活」がありますが、ここでは(1)の手続きに関することを中心に、基本的な進め方をステップごとにわけて紹介していきます。

STEP1 エンディングノートに取り組む

エンディングノートとは、人生の最後について記すノートのことです。これがあればもしもの時、家族へ思いを伝えることができます。必要な情報がまとまっていれば、残された家族の負担も減らすことができます。
エンディングノートは遺言書とは異なり、法的拘束力はありません。決まった形式もありません。最近では、自治体で配布され書店などでは販売もしていますが、手持ちのノートをエンディングノートとして活用することもできます。またネットでダウンロードができるものやスマホのアプリなどもあり、自分の好みにあったものを探して取り組んでみるのもよいでしょう。

エンディングノートでよく書かれる内容

エンディングノートは形式だけではなく書く内容も自由です。一般的に以下のようなものを記す方が多いです。
●財産一覧
●葬儀やお墓の希望
●友人・知人の連絡先(自分との関係も記しておく)
●遺言書の有無 など
そのほか、大切な人へのメッセージを記したり、自分史を書いたりという方も多いようです。
また死後の希望だけでなく、介護についての希望や終末期医療に関する考えなども書き加えておけば、身体能力や判断能力に不安が生じた場合にも安心といえるでしょう。

エンディングノートを書くコツ

なんでも書いてよいエンディングノートですが、むやみに範囲を広げると挫折してしまうこともあります。まずは必要最小限に絞って、できることから始めるようにしましょう。例えばSTEP2以降で説明する手続きについて、少しずつ実行しながら書き足していけばエンディングノートが作れます。
また途中で挫折するのを防ぐために、今後の人生を楽しむためのリストを作るなど楽しみもプラスにするのもおすすめです。エンディングノートは何度でも書き直しができます。まずは気軽に取り組んでみましょう。

STEP2 資産の把握と整理

STEP2 資産の把握と整理

資産とは、預貯金だけでなく保険や投資商品(株式、投資信託など)、保険なども含まれます。そのほか家などの不動産や車、貴金属なども資産として数えられます。またローンなどの負債も「負の資産」として計上されます。現在の資産をしっかりと確かめれば、老後の資金計画にも役立ちます。
家族にとっても、資産がどうなっているのか、どの金融機関と取引していたのかなどがわからないと困る場合が多いようです。

特に、子世代と離れて暮らしていると通帳を保管している場所を見つけるのもひと苦労です。取引のある金融機関名・支店名、金融商品の種類、口座番号などをリスト化し、エンディングノートに書き込んでおくと、いざという時も安心です。ただし暗証番号やパスワードなどの個人情報は、リストやエンディングノートの盗難など万一のことを考えて書かないようにしましょう。

さらに可能ならば、使ってはいない口座を解約し不要な不動産を売却するなどの整理も行いたいものです。また資産の状況は、日々の生活の中で変化するものなので定期的に見直すようにしましょう。これにより、老後資金が計画通り進んでいるか計画を修正する必要があるかなどもわかってきます。

STEP3 身辺の整理

STEP3 身辺の整理

終活における身辺の整理は多岐に渡ります。まずは、不用品を処分するモノの整理を行いましょう。家の中には、自分が認識しているよりもずっと膨大な量のモノがあります。一気にすべてを整理することは無理と心得て、元気なうちから少しずつ取り組みましょう。部屋ごとに区切って整理するなど、計画的に進めるのもよいでしょう。

モノだけでなく人間関係の整理も考えてみてください。儀礼的にお付き合いしていた人ならば、終活を機に徐々に距離をおいていくのも一考です。併せて、友人・知人はどの方を葬儀に呼ぶか、親族にもどこまで知らせておくべきかなど、本人以外では判断しがたい場合もあるためリストアップしておくとよいでしょう。

最近は、情報をデジタルで管理することも増えてきました。モノだけでなく不要なデータも処分して、残したいデータはわかりやすく保存しておくなど、デジタルデータの整理も心がけたいものです。
また処分するばかりではなく、身辺整理の一環として墓や葬儀について希望があれば生前予約することも考えてよいでしょう。生前に用意しておけば、自分の希望が通りやすくなるだけでなく相続税等の節税にも役立ちます。

STEP4 相続対策や遺言書の準備

資産を遺族に残したい場合は、計画的に準備を行うことをおすすめします。

相続税の対策

相続税の対策

相続税は、あらかじめ相続財産を少なくする対策をとることで軽減できます。
遺産総額が3,600万円以下であれば相続税はかからないため税務署へ申告する必要はありませんが、土地や持ち家などの不動産も総額に含まれます。不動産の相続税は土地等の評価額に応じて決まります。資産に不動産が含まれる場合は評価額を把握しておきましょう。

相続税を軽減するには、暦年贈与(年間110万円まで非課税)や贈与税の非課税措置を利用して生前贈与を行っておくなどの方法があります。また、生前に墓地やお墓を購入することも相続税を抑えるのに役立ちます。ほかにも節税方法はいろいろあります。具体的には税理士に相談するのがよいでしょう。

遺言書の作成

遺言書の作成

遺産相続となると、額の大小に関わらず親族間でトラブルが起きることがあります。相続時のトラブル防止に有効なのが遺言書だといわれています。エンディングノートに書き残して意志を示すだけでなく、法的拘束力を持たせたい場合は遺言書を作成するようにしましょう。

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。自筆証書遺言は、その名の通り自分で書くもので、(1)氏名(2)日付(3)本文を自筆で書いて押印します。費用もかからず手軽ですが、要件を満たさない場合は無効になるケースもあります。
公正証書遺言は、公証役場の公証人によって遺言書を作成してもらうものです。原本は公正役場で保管され紛失や偽造のおそれはありません。ただし遺言書に記載漏れとなった財産には効力はないので、財産の種類が多い場合はしっかり洗い出しする必要があります。
秘密証書遺言は、自筆で作成した遺言書を公証役場に持ち込んで、公証人と証人2人へ遺言書を提出するというもので。公証人や証人は内容には関与しません。また保管は自分で行います。

STEP4 身元保証・家族信託

STEP4 身元保証・家族信託

終活では自分の死後だけでなく、病院や福祉施設に入ることになった場合も想定しておきたいものです。保証人などは家族に任せられない、任せたくない場合もあるでしょう。そんな時に役立つのが「身元保証」です。また介護や終末期医療で家族に経済負担をかけたくない場合は、「家族信託」により自らで賄えるようにする方法もあります。

身元保証とは

身元保証は、病院への入院や福祉施設への入所の際に必要な身元保証人を家族に代わって引き受けてくれるサービスです。事業者によっては葬儀や納骨、死後事務の支援なども行っているところも多くあります。単身や夫婦のみの世帯にとっては心強いサービスだといえるでしょう。

費用相場はサービス内容によって異なり、入院・入所の身元保証人サービスで50万円程度、葬儀~死後事務のサービスで70万円程度とされています。しかし契約内容によってはオプションとなって別途費用が必要になることもあります。料金だけでなくサービスの内容も事業者によって異なるので、比較して自分にあった内容なのか検討する必要があります。また自治体でも相談を受け付けている場合があるので、まずはお住まいの地域包括センターなどに相談してみるのもいいでしょう。

家族信託・成年後見人制度

認知症を発症してしまうと金融資産が凍結してしまいます。これは認知症の方を詐欺被害から守るための措置です。しかし金融凍結がなされてしまうと、家族が代わって銀行預金をおろすこともできなくなってしまいます。そこで有効なのが「家族信託」という制度です。認知症になる前に「誰が」「いつ」「どんな目的で」を決めた上で契約します。家族信託を利用すれば預貯金だけでなく、『家を売却して生活費等に当てる』といったことも家族ができるようになります。

また、似たような制度として「成年後見制度」というものもあり、本人の意志で後見人や委任内容を決めることができます。成年後見制度は、認知症発症後でも利用できますが家庭裁判所への申し立てが必要であり、金融凍結が解除されるまで3~4ヶ月かかる場合があります。

終活の注意点とアドバイス

終活の注意点とアドバイス

終活を行えば自分の意志が明確に示せます。残された家族への負担も減らせることができます。また、終活することでその後の人生も充実したものにできます。メリットの多い終活ですが、実りあるものとするためには、注意しておきたい点がいくつかあります。

家族に知らせておく

せっかく終活をしても家族が知らないでいますと、自身のプランが実行されない場合があります。できれば家族と話し合いたいものです。具体的な希望がわかれば、家族もいざという時に希望を叶えやすくなり安心感も持てます。話し合いができない場合でも、「終活をしている」「エンディングノートを書いている」などと知らせておくようにしましょう。

専門家に相談する

終活の中で特に煩雑なのが、相続税対策や遺言書の作成など資産に関することでしょう。各家庭のケースによってポイントが異なることが多く専門家の知識が必要となります。相続税や生前贈与については税理士、遺言書の作成については司法書士など、専門家のサポートを受けた方が確実です。

エンディングノートや遺言書は最新情報への更新を忘れずに

エンディングノートは何度でも書き直しができます。書き始めた時と状況や心境などが変わり、違う内容にしたくなったり、資産状況が当初とは変わったりした場合は最新の内容に修正しましょう。
また遺言書は最新の日付のものが有効となります。相続の内容を変えたい場合は、書き換えて最新の遺言書に更新しておきましょう。

終活の相談ができる窓口

終活の相談ができる窓口

終活についての情報は本やインターネットで調べることができますが、相談できる窓口も多数あります。
自治体によっては終活支援があり、セミナーを開催し相談会を行っている場合があります。無料や低料金で利用できることが多く手軽に利用できます。お住まいの地域で終活支援があるか確認してみましょう。
また民間の事業者も終活サービスを行っています。終活セミナーなどのほか、個別相談を行う事業者もたくさんあります。本格的なアドバイスやサポートを受けたい場合は個別相談がおすすめです。費用相場は事業者によって幅が大きく、数千円/月~数万円/月までさまざまです。

證大寺|終活のご相談を行っています

終活の相談ができる窓口

仏教人生大学講義の様子

江戸川区にある證大寺でも、お墓の申し込みなどでご縁があった方を対象に終活相談を行っています。お墓や葬儀についてはもちろんのこと、介護や相続、身元保証、生活支援などといった終活全般の相談ができます。また専門家の意見が必要な場合には、證大寺が信頼できる専門家を紹介してくれるので安心です。
なにより「お寺の終活」だけあって、手続きについての終活にとどまらず「こころ構えの終活」のための取り組みも充実しています。仏教人生大学では仏教に関する有意義な講座が多数あり、「生について」「死について」など多彩に学ぶことができます。また終活の内容に沿ったその他の講座も豊富に用意されています。
證大寺では江戸川区の本坊のほか、千葉県船橋・埼玉県森林公園でも昭和浄苑という霊園を運営しています。また一般墓だけでなく樹木葬など種類も選べます。終活の一環としてお墓を検討されるならば、證大寺、昭和浄苑へ相談してみてはいかがでしょうか。生前からご縁を結ぶことで終活の悩みにも応えてもらえます。

終活に関する監修
仏教人生大学 講師
加藤 順節

PROFILE
真宗大谷派の僧侶として、證大寺 船橋別院所属。證大寺 銀座別院で仏教入門講座など多数講師を務めており、さまざまなテーマで仏教から人生を学ぶ講座を開催している。

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