お通夜とは?遺族側・参列者側が知っておきたいマナーや流れを解説

葬儀

お通夜は葬儀の前夜に行われる儀式ですが、時代の変化に伴い、そのあり方も変わってきています。まず、お通夜の本来の意味をご説明し、その上で現代の一般的なお通夜で喪主や遺族が行うべき準備や当日の流れについても解説します。あわせて参列する側のマナーなども説明します。

(目次)
●お通夜とは
●お通夜には「仮通夜」と「本通夜」がある
●【喪主・遺族側】お通夜までの流れ
●【喪主・遺族側】お通夜当日の流れとやるべきこと
●【参列者側】お通夜当日の流れ
●【参列者側】お通夜に参列する際のマナー
●證大寺のお通夜・葬儀
●まとめ

お通夜とは

お通夜とは

お通夜とは、葬儀の前夜に親族や親しい友人などが集まって故人との別れを惜しむ儀式です。「夜を通じて」灯明と線香の火を絶やさないようにすることから、お通夜と呼ばれています。

お通夜には「仮通夜」と「本通夜」がある

お通夜には「仮通夜」と「本通夜」がある

お通夜の由来は、故人が本当に亡くなっているのかを確認するためという説があります。現代では、心拍停止などで医師によって死亡が確認されます。しかし昔は時の経過によって蘇生の見込みがないことを確認するために行っていたといわれています。またお通夜は、本来は「仮通夜」と「本通夜」があって二晩に渡って行われていました。

身内だけで行うのが「仮通夜」

亡くなった当日の夜に遺族などだけで行うのが「仮通夜」です。身内だけで故人と過ごすことができる最後の夜となります。故人と向き合えるように、遺体は棺ではなくふとんに寝かせることが多いです。仮通夜は故人と一緒に過ごすということが重要とされ、特別になにかを行うということはなく、僧侶による読経も省略されることもあります。
最近では、亡くなった後に遺体が病院などの安置所に置かれ、仮通夜を行わないことも増えてきています。

「本通夜」は弔問客も参列する

仮通夜の翌日以降に、弔問客を迎えて行うのが「本通夜」です。現代ではお通夜というと、本通夜を指す場合がほとんどです。一般的には17時ころから2時間ほどの儀式となります。本通夜では弔問客が訪れるため、遺体は棺に納められます。
最近では葬儀よりお通夜の方が、弔問客が多く訪れる傾向があります。葬儀は日中に行われることが多いことから、仕事などで弔問できない方が多いためといわれています。

【喪主・遺族側】お通夜までの流れ

【喪主・遺族側】お通夜までの流れ

弔問客が参列するお通夜(本通夜)を執り行う際に、喪主や遺族が行うべきこととその流れを説明します。

(1)お寺や親族と日程調節し、葬儀社と打ち合わせする

お通夜は一般的には亡くなった翌日に行われますが、まずはお寺や親族に報告して日程調整を行います。その際、お通夜だけでなく葬儀の日程についてもあわせて調整するのが通例です。また生前に戒名(法名)を授かっていない場合は、授けてもらうように僧侶に依頼します。
次に葬儀社にも連絡して、お通夜・葬儀の日程やプランを決めていきます。この際、見積もりを必ず取って料金の内訳まで確認するようにしましょう。できれば葬儀社は1社だけに依頼するのではなく、複数から見積もりを取って比べてみて、信頼できる業者を選ぶようにしましょう。またお通夜・葬儀後には市区町村役場で発行される火葬許可証が必要となるので、死亡届と同時に申請しましょう。葬儀社が申請等を代行してくれるサービスもあります。

(2)お通夜の案内をする

お通夜の日程が決まったら、親族や友人知人・職場関係者などに連絡するようにします。基本的には電話でよいですが、行き違いが心配ならメールなども活用しましょう。
また親族同士で供花や供物を同じにしたいなど相談が入ることが多いですが、親族の取りまとめは基本的に遺族が担います。喪主や遺族はお通夜・葬儀でなにかと多忙なので、信頼できる親族に窓口となってもらうのもよいでしょう。

(3)受付などのお手伝いの依頼をする

お通夜の当日は、喪主や遺族は弔問客に対応する役目があるため、受付や案内係などまで行えないことが多いです。その場合は親族や親しい友人・知人などにお手伝いを依頼しましょう。お手伝いの人数は規模によって異なりますが、手伝ってくれた方にはお礼としてお通夜や葬儀の終了後に「お志」を渡すことが多いです。

(4)祭壇に飾る「遺影」を選ぶ

遺影はカメラ目線でピントが合っている写真を選びます。大きく引き伸ばして使用することになるので、なるべく顔のサイズが大きく写っているものを選ぶようにします。
遺影の写真のほかに、棺の中に入れたい副葬品もお通夜までに準備しておきたいです。火葬の際に制限されている物もあるので、葬儀社に確認を取ってから棺に納めるようにします。
また僧侶に渡すお布施の準備もお通夜までに整えておくようにしましょう。

【喪主・遺族側】お通夜当日の流れとやるべきこと

【喪主・遺族側】お通夜当日の流れとやるべきこと

お通夜の当日は、まずお通夜の前に「納棺の儀」を行います。自宅や安置所から故人の遺体を会場に運び、体を清めて死装束や死化粧を施して棺に納める儀式です。葬儀社に依頼すると専門知識を持つ社員等が行ってくれます。
続いて行われるお通夜は仏事ならではの作法があり、参列者も訪れます。進行は葬儀社が担ってくれますが、喪主や遺族は流れを頭に入れておくようにしましょう。

(1)葬儀社との進行確認

葬儀社と供花・供物、席次、焼香の順序などの確認をします。お通夜の席次は焼香台の位置などによって席順が変わってくるため、葬儀社に必ず聞いておくようにしましょう。また礼状や返礼品の内容や数などについても、事前の打ち合わせ通りか確かめておきます。
そのほか進行や喪主の役割などでわからないことがある場合は、このタイミングで確認するようにしましょう。

(2)僧侶への挨拶

僧侶が到着したら、まず挨拶します。僧侶は戒名(法名)、俗名(生前の名前)、没年月日・没年齢が記された白木位牌を持参してくるので、間違いがないか確認しましょう。その際、戒名(法名)についての由来なども聞いておくとよいでしょう。

(3)受付

(3)受付

通夜開始の30分ほど前から受付を始めます。喪主や遺族は受付で参列者からの挨拶を受けるようにします。開始時間の少し前になったら指定された場所に着席し、席から参列者を迎えます。

(4)読経・焼香

喪主・遺族が着席してから僧侶が入場し、お通夜の始まりとなります。僧侶が読経を行うので、静かに耳を傾けるようにします。僧侶の合図で焼香が始まり、まずは喪主、その次に遺族、そして参列者と、故人との縁が深い順で焼香をしていきます。

(5)僧侶退場、通夜終了

読経と焼香の後は、僧侶が法話をすることもあります。喪主・遺族と参列者は、席についてまま法話を聞きます。その後僧侶は退場となるので、座ったままお辞儀をして僧侶を見送るようにしましょう。
この後、喪主による挨拶を行って、通夜の儀式は終了となります。挨拶は参列への謝意などを手短に述べるようにしましょう。また通夜振る舞いの席を用意している場合は、その案内も行います。

(6)通夜振る舞い

(6)通夜振る舞い

通夜振る舞いとは、通夜終了後に行われる会食です。故人との最後の食事という意味合いのほか、お清めや供養、参列者への感謝の気持ちを表す席という意味もあります。僧侶にも同席をお願いしますが、辞退された場合は「御膳料」を包んで、お車代とともに渡します。
通夜振る舞いは仏事ではないので、明確な決まりごとはありません。一般的には喪主が挨拶をし、献杯して会食を始め、会食中に喪主や遺族が参列者に挨拶回りを行います。終わりは喪主が再び挨拶をして閉会となります。
また地域によっては通夜振る舞いの習慣がないところもあります。習慣がある地域でも、参列者に粗供養品を渡して省略するケースも増えています。

(7)棺守り(かんもり)

参列者が退出した後、遺族だけが残って「棺守り」を行います。棺守りは「寝ずの番」などとも呼ばれ、ろうそくや線香を絶やすことなく夜通し焚き続け、朝まで故人に付きそうというものです。「仮通夜」が行われることが少なくなった現代では、棺守りこそ本来の意味での「お通夜」に近いといえるでしょう。しかし時代の変化を受けて、最近では夜通しの棺守りは行われず、通夜振る舞いまでで終える「半通夜」が一般的となって来ています。

【参列者側】お通夜当日の流れ

【参列者側】お通夜当日の流れ

お通夜への参列は大抵の場合急なことで、どのように振る舞えばよいか戸惑ってしまうこともあるでしょう。参列者側のお通夜当日の流れを把握しておき、いざという時も困らないようにしましょう。
お通夜の会場に到着したら、受付で一礼してお悔やみの言葉を述べて名前等を記帳します。その後、袱紗で包んでおいた香典を取り出して渡します。葬儀にも参列する場合は記帳のみとし、香典は葬儀で渡すようにします。
その後案内に従って着席し、お通夜が開始されるのを静かに待ちます。読経が始まって焼香が回ってきたら、遺族に黙礼をしてから焼香を行います。

通夜振る舞いはできるだけ応じるように

通夜振る舞いは、別の部屋で飲み物や食事が提供され、参列者が集まって故人の思い出を共有し、故人を心に留めて語り合う場となります。通夜振る舞いのお誘いがあれば、できるだけ応じるようにしましょう。事情があって参加できない場合は、遺族に声を掛けて挨拶してから目立たないように退席します。
喪主の挨拶で会食が始まるケースが多いですが、スペースの問題などで焼香が終わったらすぐに通夜振る舞いの席へと案内される場合もあります。食事に手をつけてしばらくしてから順次退席するという形式なので、長居せず30分程度を目安に退席するようにしましょう。

【参列者側】お通夜に参列する際のマナー

【参列者側】お通夜に参列する際のマナー

お通夜に参列する際には気をつけたいマナーがいろいろあります。訃報を受けてから慌てないよう、あらかじめ知っておくようにしましょう。
なお故人や遺族と身近な間柄にある方は、お通夜と葬儀・告別式の両方への参列が望ましいですが、理由があればお通夜だけの参列でも失礼に当たりません。

服装のマナー

服装は、ブラックスーツやブラックフォーマルといった略礼服での参列が主流となっています。男女とも、光沢のないシンプルな素材を選び、毛皮などの殺生を連想させる素材は避けることが基本です。また華美にならないように気をつけましょう。
女性は夏場でも袖丈が5分袖〜長袖、スカート丈は膝丈より長いものがおすすめです。またアクセサリーは、結婚指輪以外は身に着けないようにします。ただし故人を偲ぶ涙を表す真珠のアクセサリー類はつけてもよいとされていますが、シンプルなデザインに限ります。
男性の場合は、ネクタイは黒無地のものを選び、ディンプルを作らないように結びます。
子どもが参列する場合は、学校の制服を着用しましょう。制服がない場合は黒や紺、グレーなどのブレザーとパンツまたはスカートなどを着用するようにします。

持ち物のマナー

持ち物のマナー

葬儀の際に持参するバッグは、布製でツヤのない黒色無地のものを選ぶようにしましょう。普段使いしているものは、カジュアルな印象を与えてしまう恐れがあるので避けます。
数珠(念珠)も必要で、式の間は左手首にかけておくようにしましょう。ハンカチや手袋、傘などは黒色か白色の落ち着いた色のものを選ぶようにします。

香典のマナー

お香典は袱紗(ふくさ)に包んで持参するのがマナーです。

お通夜の際の香典の表書き

お通夜の場合の表書きは宗教によって異なるので、故人の宗教に合わせた表書きを選びます。仏式では「御霊前」を用いることが多いですが、浄土真宗の場合は「御仏前」を用います。キリスト教では「御花料」、神道では「御榊料」「御玉串料」などが表書きとなることが多いです。いずれも毛筆または筆ペンを使って薄墨で書くようにします。

香典の中袋

中袋の表側には、中央に大きく縦書きで包んだ金額を書きます。漢数字の旧書体を用いて「金〇〇圓也」と書くようにしましょう。裏面は左下に縦書きで名前と住所を書きます。こちらは番地などの数字を旧書体にする必要はありません。
中袋に入れるお札には新札を使わないようにしましょう。新札しかない場合は一度折り目をつけてから包むようにします。

香典の相場

相場金額は故人との関係性によって変わります。また参列側の年齢によっても変わってきます。
たとえば会社の同僚や友人・知人の場合なら20代では3,000〜5,000円程度、30代以上だと10,000〜50,000円程度。故人が両親や親族(親戚)の場合は20代なら50,000円程度、30代以上だと50,000〜100,000円程度が目安だとされています。

お通夜の時間に間に合わない場合はどうすればいい?

お通夜は「遅れてでも駆けつける」のがマナーとされています。お通夜の儀式自体の時間は1時間ほどなので、30分〜1時間程度遅れるようであれば諦めずに参列しましょう。遅れた場合は喪主や遺族にお詫びを伝えるようにします。2時間以上遅れる場合は、故人と親密な関係でない限りは控えた方がよいでしょう。

證大寺のお通夜・葬儀

證大寺のお通夜・葬儀

證大寺ではお寺でお通夜・葬儀を行うことができます。
故人が病院で亡くなった場合、病院側から「〇時間後には遺体を移してほしい」「葬儀社は決まっていますか?」と急かされることがあります。冷静な判断ができない状態であることが多いため、病院が紹介する葬儀社を選んだり、インターネットなどで目に付いた葬儀社を選ぶことになってしまいます。そうなると終わった後で「聞いていた内容と違う」というトラブルになったり、「思うようなものにならなかった」と後悔することもあります。
證大寺では事前にお寺でお通夜・葬儀を行うことを決めておくことができ、電話一本で證大寺が全ての手配をしてくれます。遺族は手配などで忙殺されることなく、故人と向き合う時間が持てます。

省かれがちな仮通夜だが、仮通夜は大切

最近では仮通夜が行われないことが多いですが、證大寺では「仮通夜は大切」だと考えています。仮通夜は遺族が故人とともに過ごし、故人に向き合う大切な時間です。
證大寺でお通夜・葬儀を行う場合、遺体はまず本堂横ある書院に安置されます。和室に布団を敷いてそこで故人に休んでもらい、僧侶が読経して供養してくれます。読経の後も遺族は故人と同じ場所で過ごすことができます。本通夜までの間は、僧侶と寺院の職員が毎朝読経と焼香を行ってくれます。
とはいえ時間的な都合などで、仮通夜・本通夜と2日に渡って行うことができない場合もあるでしょう。そんな場合も證大寺では、本通夜でも仮通夜のように故人と向き合うことができるようさまざまな配慮をしてくれます。

仏事支援員の体験(1)本堂で一夜を過ごして

仏事支援員の体験(1)本堂で一夜を過ごして

では実際には證大寺で行うお通夜は、どんな雰囲気になるのでしょうか。證大寺には仏事支援員と呼ばれる職員がいて専属で担当し、葬儀社との打ち合わせのサポートなどで喪主に付き添ってくれます。通夜の席で喪主付き添い人を務めた仏事支援員の話によると、お通夜で本堂に泊まることに驚かれる遺族の方もいらっしゃるとのこと。
「ご遺族の方が『お寺の本堂でのお通夜って、テレビの中だけのものだと思っていた』と驚いておられました。もちろんお通夜の際は本堂でご家族みなさんにお泊まりいただきました」。
本堂で故人とともに一晩を過ごしたことは、遺族にとってかけがえのない経験になったのではないかと感じたといいます。「ご遺族の方に『仏様を祀っている本堂で父と一緒に過ごせ、本当にいい思い出になりました。仏様に一番近いところで父を見送ることができてうれしく思いました』といっていただけました」。

仏事支援員の体験(2)参列者で一体感のある式に

仏事支援員の体験(2)参列者で一体感のある式に

また別の仏事支援員は、参列者みんなでお経をあげて見送った式が心に残ったといいます。会食後も参列者がとどまっていたため、拝顔して最後のお別れをもう一度してもらうことになったそうです。「ご拝顔のあと参列者の方々が『みんなで一緒に見送ろう』とお経を読むことになったんです。みなさんが一緒にお経をあげて、とても一体感のあるお式となりました。喪主様からは『ここでさせてもらってよかった、職場の方にもよいお式だったといわれました』とのお言葉をいただきました」。
お寺でのお通夜・葬儀は、セレモニーホール等で行うのとは違って厳かな雰囲気があるとはよくいわれます。しかしそれ以外にも、お寺の本堂という場の持つ力なのでしょうか、心に残る式となることが多いように思われます。お通夜や葬儀の場所を考える時、證大寺で行うことも選択肢の一つとしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

まとめ

お通夜は急に執り行うことになることが多く、また葬儀の前日の儀式のためなにかと慌ただしくなりがちです。喪主側・参列側とも失礼のないように振る舞うのはもちろんですが、慌ただしさに振り回されることなく、「故人を偲んで見送る」という本来の意義を忘れないようにしたいものです。

お通夜に関する監修
仏教人生大学 講師
加藤 順節

PROFILE
真宗大谷派の僧侶として、證大寺 船橋別院所属。證大寺 銀座別院で仏教入門講座など多数講師を務めており、さまざまなテーマで仏教から人生を学ぶ講座を開催している。

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