
ⓒ FUMITO SUZUKI
春、梅の香りに誘われて、月の路を辿る。
夏、夕暮れの涼しさを待ち、灯りを巡る。
秋、清風明月。夕焼けとともに心が満ちる。
冬、時を超えて、あのひとときが甦る。
いつもこの路を歩いて、会いに行きます。
あなたとの会話が、月燈慈に包まれ静かに始まります。
陽が落ちると、ここは、風の音しか聞こえません。
宵参り

宵参り
宵を迎えた浄苑に、灯りの路が現れます。
豊かな緑と浄苑墓へ連なる灯りは、路を照らし、
点在する灯りは、行き先を灯します。
宵参りは、こころとこころをつなぐ、
静かなひととき。慈しみが、
墓参する人々に満ちていきます。
浄苑の宵参りは、月燈慈の灯りが心に寄り添います。
がっとうじ月燈慈

がっとうじ月燈慈
新装した山門、その入口から浄縁墓へと、
緩やかに下る参道。その道をやさしく、
左右の灯りが架け橋のように浮かびあがります。
月燈慈は、證大寺・昭和浄苑の
宵参りをやさしく包み込みます。
浄苑の夜の灯りは、
慈悲にあふれた月光をイメージしています。
山門から参道、浄縁墓にいたる光景は
月の光と影が再現されています。

【宵参りの声】
月燈慈の灯りのもと、
宵参りを体験された方々から
感謝と感動の声が寄せられています。
やさしい月燈慈の灯りにお墓が照らされている風景を見て、亡くなった主人に受け入れてもらったような思いがしています。とてもホッとして安心してお参りをすることができました。夕方からお墓の前でお経もあげてくださってありがとうございました。改めて昭和浄苑を選んでよかったと思いました。また来たいと思います。
70代女性
初めて夜のお参りの体験をしました。想像していたよりもずっと素晴らしく、どうしてここまで私たちのことを考えてくださるんだろうと胸がいっぱいになりました。お墓は寂しいところではないんですね。大切な人も安心してここで休んでいると感じました。
70代男性
ペット供養をしてもらっているので、夜間に誰もいない時間に行くことが多いのですが、安心して手を合わせることができてありがたいです。月燈慈が道をやさしく照らしてくれているので、1人でも安心してお参りができました。
50代女性
夜のお参り、と聞くと「怖い」というイメージがありました。でも実際にこうやって、月燈慈を持って歩いてみるとそういった怖いイメージはなくなりました。かえって心が豊かになり「また来るよ」と言える気持ちになりました。
70代女性
【座談会】
井上城治×廣村正彰×
内原智史×佐々木楓子
灯りがつなぐ「祈り」と「デザイン」
月燈慈が生まれるまで

證大寺昭和浄苑に「月燈慈」が設置され、宵参りも始まりました。
本日は「月燈慈」をデザインした内原智史氏、佐々木楓子氏、
デザイナーの廣村正彰氏、
そして證大寺の井上城治住職にお集まりいただき、
「月燈慈」誕生の背景を伺います。
「月燈慈」誕生のきっかけ
井上 夜、お墓に懐中電灯を持ってお参りに来る方がいると職員から聞いたのが始まりでした。お母さまを亡くされた方、あるいは自分の病気を前に心を整理しに来る方もおられました。暗い中で泣いている人もいると知り、胸が痛みました。夜でも安心してお参りできるようにしたいと思ったのです。ただ、ただ明るくすればいいとは思いませんでした。闇の中にあっても静かに寄り添う光 - そんな灯りをつくりたいと考え、ライティングデザイナーの内原先生に相談しました。
光のデザイン
内原 私は光のデザインを専門にしていますが、墓地照明は初めての挑戦でした。浄苑の環境は太陽光が豊かで、その恵みを生かして、昼の光を蓄え夜に還すような照明を考えました。夜は静かで、風や虫の声も聞こえる。そんな自然の中で、光が人の心に寄り添う存在になるように設計しました。
「月燈慈」という名前
佐々木 浄土真宗では、月の光を仏の光として捉えます。闇を打ち払うのではなく、闇とともにある光。住職のお話を伺い、その考え方に深く共感しました。夜のお参りを新しい概念として表したいと思い、「月燈慈」と名付けました。月の「光」、導く「燈」、そして慈悲の「慈」。プレゼン当日の朝まで悩みに悩みましたが、電車の中でふっとこの言葉が浮かんできたのです。
井上 闇を破る光ではなく、闇に寄り添う光こそ“慈悲の光"。その発想に心を打たれました。
命のような光
廣村 お墓という場所は、人生や家族を振り返る契機になるところです。夕方、空が茜に染まり、やがて「月燈慈」が一つ、また一つと灯る。その光が同時にではなく、少しずつ、まるで呼吸をするように点いていくのが印象的でした。不揃いだからこそ生命を感じ、人の温もりが宿る光だと思いました。
反対、そして決断
井上 計画の途中、世話人会で「他のお寺がやっていないのになぜうちが」と反対の声が上がりました。その時、職員が「だからこそ證大寺がやるべきです」と言ってくれました。その言葉に背中を押されました。完成後、初めて迎えたお盆の夜、世話人の皆さんが誰よりも喜んでくださったのが印象的でした。夏には浴衣姿の親子連れが「宵参り」に訪れ、光に照らされながら手を合わせる姿を見かけます。夜のお墓が“怖い場所"から“心安らぐ場所"へと変わりつつあります。
日本的な光の思想
廣村 お墓が日常の延長線上にあって、行きたい時に行ける。そんな受け入れてくれる場所が理想です。
廣村 お墓が日常の延長線上にあって、行きたい時に行ける。そんな受け入れてくれる場所が理想です。
内原 「手紙処」を初めて知った時、本当に感動しました。亡くなった方と新しい形で向き合う空間があるのは、現代に必要な発想だと思います。
廣村 ここにある光は街の照明とはまったく違います。日本人は古くから闇を価値あるものとして受け止め、反射や陰影を楽しむ文化を持っていました。谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』のように、闇があってこそ光が際立つのです。
内原 暗闇は恐怖でもありますが、想像力を呼び起こす世界でもあります。私たちが目指したのは“安心できる闇"。月の光は太陽の反射光であり、直接ではなく間接的に届く。その優しさこそ、人の心に響くのだと思います。
井上 浄縁墓を設計された和泉正敏先生も、「この石は月光を受けて輝く」とおっしゃっていました。まさに「月燈慈」に通じる思想でした。
和泉先生が教えてくれたこと
廣村 山門から参道を歩くと、並ぶ「月燈慈」に導かれるように浄縁墓が現れる。その光景は舞台のようでもあり、歩くこと自体が祈りの時間になっていると感じました。
井上 和泉先生は「参道に起伏があるのが良い」と言われていました。歩くたびにお墓が見え隠れし、光と影が移ろう。その意味が「月燈慈」を灯して初めてわかりました。振り返ると、参道が橋のように光でつながって見えたのです。
光の足跡
井上 夜のお参りの方が「月燈慈」を墓前に残していかれるのを見て、内原先生が「光の足跡ですね」と言われました。翌朝、墓前に残る灯りを見つけると、そこに誰かの想いが静かに息づいているように感じます。
デザインの工夫
佐々木 満月のような柔らかい光を出すため、真っ白に近いアクリルを使い、透過率を何度も調整しました。くり抜かれた穴から光がにじむ構造で、内部の拡散光を増やして奥行きのある光とくり抜かれた穴が一番明るく光って見えるデザインを実現しています。シンプルに見えて、実はとても緻密な設計です。
宗教とデザインの結節点
廣村 現代では、亡くなった人との関係を断ち切って忘れようとする風潮がありますが、日本には先人を敬い、思いを継ぐ文化があります。お墓はその記憶をつなぐ場所であり、考えるきっかけをくれる存在です。
井上 仏教も「忘れなさい」とは言いません。亡き人を仏として敬い、願いを受け取りながら生きていく。それがお墓参りの本質です。「月燈慈」は、その時間を取り戻すための光だと思っています。
未来への展望
廣村 宵参りと「月燈慈」は、新しい墓地のあり方を提示してくれました。お墓が生活の一部に自然に存在する、そんな社会が理想です。
内原 光は人がいてこそ生まれます。人が灯すからこそ温かい。それが「月燈慈」の本質であり、證大寺らしさだと思います。
佐々木 どんな人でも受け入れる光として、「月燈慈」が多くの方の心に届けば嬉しいです。
井上 先人たちが見ても「これならいい」と言ってくださるような形にできたと思います。今後は江戸川や森林の證大寺にもこの灯りを広げていきます。本日はありがとうございました。
【プロフィール】
井上城治(いのうえ じょうじ)/證大寺
1997年に證大寺第20代住職を継承。仏教公開を念じて誰もが街の中で仏教を学ぶことができる仏教人生大学の設立や、亡き「あの人」へ手紙を記し届ける手紙寺などを開設。
廣村正彰(ひろむら まさあき)/廣村デザイン事務所
1988年に廣村デザイン事務所を設立。グラフィックデザインを中心に、美術館・商業施設・教育施設などのCI・VI計画やサインデザインを幅広く手がけている。手紙寺プロジェクトをはじめ、證大寺が展開する様々な取り組みにアートディレクターとして携わる。
内原智史(うちはら さとし)/内原智史デザイン事務所
1994年に内原智史デザイン事務所設立。ライティングデザイナーとして、「東京国際空港国際線旅客ターミナル」「虎ノ門ヒルズ」 「平等院鳳凰堂」など、幅広い施設のライティングデザインを手がけている
佐々木楓子(ささき ふうこ)/内原智史デザイン事務所
チーフデザイナー。2017年に内原智史デザイン事務所入社。六本木ヒルズのクリスマスイルミネーションやグラングリーン大阪のライティングデザインを担当。
【交通アクセス】
證大寺 江戸川本坊
住所:〒134-0003 東京都江戸川区春江町4-23-1
電話:03-3653-4499
開門:7:00-17:00(無休)
※お参りは24時間可能です
都営新宿線「一之江駅」より徒歩10分、 「新宿駅」から23分、
「東京駅」から23分。東西線「葛西駅」から都営バス「平23 平井駅前行」
に乗車し、 バス停「春江町四丁目」下車徒歩1分。6台の駐車場完備。
證大寺 船橋 昭和浄苑
住所:〒274-0082千葉県船橋市大神保町1306
電話:047-457-0550
開苑:9:00-17:00(水曜休苑)
※お参りは24時間可能です
正門前に路線バス停留所あり。(新京成バス「證大寺昭和浄苑」。)
JR「船橋駅」から35分、新京成線「三咲駅」から10分、新京成線「北習志野駅」から20分、北総線「小室駅」から10分。110台の駐車場完備。
(東葉高速線「北習志野駅」まで、「大手町駅」から直通33分)
證大寺 森林公園 昭和浄苑
住所:〒355-0008 埼玉県東松山市大谷196
電話:0493-39-3281
開苑:9:00-17:00(水曜休苑)
※お参りは24時間可能です
JR「熊谷駅」と東武東上線「森林公園駅」から専用の送迎バスを
2台運行。約100台の駐車場完備。(上越新幹線にて「大宮駅」から13分、
「東京」駅から39分)